お知らせ
季節の変化と心身の波について
2026年5月1日
私たちの心と体は、季節の移ろいと密接に関係しています。 「特定の季節になると体調を崩しやすい」「ある時期が来ると辛い記憶が蘇る」といったお悩みは、気のせいではありません。これらの変化には、日照時間や気圧による自律神経の乱れ、社会環境の変化、さらには過去の出来事(受験や大切な方との別れなど)に伴う「記念日反応」といった具体的な要因が深く関わっています。症状の現れ方はお一人ずつ異なりますが、ご自身の「波」の傾向を把握することで、事前に対策を立てる「予防的な関わり」が可能になります。ぜひ、季節の変わり目にはご自身の心身の変化に少しだけ意識を向けてみてください。

例えば4月は、入学や入社といった人生の大きな節目であり、心身が激しく揺れ動く「変化の時」です。新しい環境に馴染もう、あるいは過剰に適応しようと無理を重ねた結果、心身が疲弊してしまうことも少なくありません。また、春特有の強い眠気に悩まされることもありますが、これは陽気の影響だけでなく、花粉症の薬の副作用が関係している場合もあります。続く5月は、4月の緊張の糸が切れる時期です。大学生であれば、いわゆる「五月病」として不適応や過剰適応の反動が現れやすく、高校生の場合は不登校という形で表れることもあります。また、ゴールデンウィークの帰省をきっかけに、家族や恋人との間に抱えていた問題が表面化しやすいのもこの時期の特徴です。
そして6月、梅雨の季節になると「気象病」への注意が必要です。湿気や気圧の変化が自律神経を揺さぶり、頭痛、吐き気、めまい、倦怠感といった心身の不調を引き起こしやすくなります。7月から8月にかけては、厳しい「暑さ」が心身にとって最大の課題となります。熱中症への対策はもちろんですが、暑さそのものが精神疾患の症状を悪化させる要因となる点にも注意が必要です。最近では、夜間の高温とうつ症状の関連も指摘されています。また、暑さによる息苦しさがパニック発作を誘発しやすいため、パニック障害を抱える方や、広場恐怖症で満員電車が苦手な方にとっては非常に過酷な時期と言えるでしょう(電車が急病人で止まることが多いのもこの季節です)。いわゆる「夏バテ」による体力低下に加え、お盆の帰省などで家族や親戚との問題が表面化し、急激に精神症状が悪化することもあります。
9月から10月の秋の訪れは、季節の変わり目特有の不安定さが現れる時期です。学校生活が再開する9月は、4月と同様に適応力が求められます。特に学生においては、夏休み明けに心身のバランスを崩し、深刻な事態(自死のリスクなど)を招きやすいため、周囲の細心の注意が必要です。また、涼しくなるこの時期は、自律神経の切り替え(交感神経優位から副交感神経優位への移行)が心身に大きな負荷をかけます。秋雨の影響も相まって、強い倦怠感に悩まされることも多い時期です。
11月から12月にかけては次第に夜が長くなり、日光を浴びる時間が減少します。この日照時間の不足は、脳内の神経伝達物質に影響を与え、「冬季うつ(季節性感情障害)」のリスクを高める要因となります。また、クリスマスや正月といった華やかなイベントは、家族や友人、恋人との関係性や孤独を強く意識させる時期でもあり、GWやお盆と同様に心理的な負荷がかかりやすいため注意が必要です。
1月・2月は厳しい寒さが心身にダメージを与えます。近年は温暖化の影響で以前ほどではないものの、依然として冷えへの対策は欠かせません。西洋薬の多くは基本的に体を冷やす性質を持つ一方、身体を温める効果が期待できるのは漢方薬であるという点です。この時期、温める性質を持つ漢方を適切に活用することは、心身の安定に大きな助けとなります。また、インフルエンザ等の感染症流行に伴い、感染後にうつ状態を呈するケースや、受験シーズン特有のトラウマ反応(過去の失敗体験の再燃)にも留意が必要です。
そして3月、ようやく暖かさを迎えますが、今度は激しい寒暖差が自律神経を揺さぶり、気分の乱れを引き起こします。別れの季節という心理的背景も重なり、心身ともに不安定になりやすい時期といえるでしょう。
以上の通り、特定の時期に生じる不調に加え、季節を問わず「記念日反応」への配慮も欠かせません。トラウマを経験された方にとって、大切な方を亡くされた時期や、辛い出来事が起きたその日は、当時の記憶や症状が鮮明に蘇る「記念日反応」として現れることがあります。
当院では、こうした季節的な変動や個別の背景を重視し、患者様が「いつ、どのような不調を感じやすいか」という傾向を共有することを大切にしています。体調が悪化する前の「先回りの対応」こそが、早期の回復への重要な鍵となります。季節の変化や記念日反応と上手に付き合いながら、皆様がより穏やかな日々を過ごせるよう、サポート致します。
当院では以上のような背景を考慮した診療を行っております。初診ご予約希望の方はまずは診療相談または予約サイトからお問い合わせください。