診療案内
からだの不調外来
当院では、治療に難渋する心身症(身体症状症)の症状の背景にある心身の両方の状態を詳細に把握し、的確な診断及び治療に結びつけていたいと考えております。
「なんだかいつも体調が悪いな」「めまいや頭痛がするな」と思って、一般内科や総合病院など受診しても異常が指摘されず、病院を転々とする方や年のせいと諦めて苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。その背景には心の悩み、ホルモンの異常、生活の乱れ、老化などが複合的に絡んだ自律神経のコントロール不良があると考えられます。
心身症、自律神経失調症、身体表現性障害、転換性障害、身体症状症など様々な病名がつけられ、治療に難渋することも多いです(ここでは「心身症」といいます)。 またうつ病の身体化といってうつ病が背景にあることもあります。
正確な統計は不明ですが、高齢者の入院の3割程度に心身医学的要因が関与するといわれておりますが、専門の内科や精神科などに縦断した診療科の構造の中では十分な診断や治療がされているとは考えにくいです。
また起立性調節障害、睡眠時無呼吸症候群、線維筋痛症、慢性疼痛、慢性疲労症候群、統合失調症などの精神病圏疾患を背景とした心身症の診断や治療は行っておりませんので注意下さい。
どんな病気?
心身症とは、「身体の病気の中で、発症やその後の経過に心理社会的な要因が密接に関係しているもの」をいいます。この「心理的社会的な要因」というのは、例えば、性格や行動パターン、ストレスへの対処法などのことです。社会的な問題は、人の心の中で葛藤状況を生じさせ、脳や神経の働きにも影響を及ぼすことがあります。心身症ではこうした精神的に不安定な状態が心身症状として現れていると考えます。
一方、身体的な不調も心の働きに影響を及ぼしますので、心身症では心と身体は複雑な相互作用を念頭においた治療が必要になります。また症状の出方としては自律神経の異常が大きく関わっております。
自律神経とは?
自律神経とは、全身に張り巡らされている末梢神経の一種でホルモン系、免疫系などと共に私たちの体をコントロールしている大切な体内システムです。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあります。交感神経は活動の神経といわれ、体を緊張状態にします。
一方、副交感神経は休息の神経といわれ、体をリラックス状態にします。胃や腸、肺、心臓などの臓器が、私たちが意識しなくても正常に働くのは、この2つの自律神経がバランスをとって働いているからです。
原因
全身コントロールシステムである自律神経が調子を崩すと体の各所に様々な症状が出ます。自律神経の機能は常にバランスをとるために変動しており、これに関連した症状も変動が激しく、更には検査異常が伴いにくい特徴があります。
更には身体の重大な病気である場合や、うつ病などの精神疾患としての対応が効果的な場合もあるため、細やかな診断(一見似ている別の病気と見分ける作業を除外診断と呼びます)や対応が必要です。
症状
自律神経の異常を基盤にするため、多岐にわたり特異的な症状はないのが実状です。内科では不定愁訴といわれることも多いです。
治療
心療内科では「心身症」という病態を示す患者さんに対して、心身医学的なアプローチ「心身医学療法」を行っています。
心療内科では、身体的な症状と心理社会的要因との関連を明らかにするとともに、患者さんに対して心身両面から治療することにより、症状の改善を図っていきます。このとき用いられる種々の方法を総称して心身医学的療法と呼びます。
当院では、心理療法を中心に、必要に応じて漢方薬や向精神薬(抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬)などの薬物療法も併用した統合医療を行っています。
一般の内科で処方される薬で症状をおさえる対処療法を行いつつ、一般の精神科やメンタルクリニックで処方される向精神薬も的確に使用していく予定です。治療に難渋することが多いため、漢方薬やカウンセリングの併用も積極的に行ってまいりたいと思います。
また慢性疼痛に関しては線維筋痛症の鑑別が必要であるのと、ブロック注射やレーザーなどによる身体に対する直接的な介入が必要なケースがあり、診療をお断りしております。
過敏性腸症候群について
過敏性腸症候群とは、便秘や下痢などの便通異常を伴う腹部不快感や腹痛が慢性的に何度も現れる病気です。通常の腹痛などとは異なり、大事な会議や試験前などによるストレスが原因で起こる症状です。
便秘と下痢を交互に繰り返すのが、過敏性腸症候群の特徴としてみられます。病気の原因として、精神的な問題(会社や学校にいくなどの義務を果たすことがつらくなっているなど)を抱えている場合が多くみられます。症状を抑えることも重要ですが、それらのストレスの原因の解決をはかることが最も大切です。
当院では、過敏性腸症候群の症状を抑えるための専用の薬がありますので、それを処方いたします。また、行動療法(苦手な状況になれていただく訓練や練習のようなもの)を用いて、ストレスを感じる状況自体に慣れていただくことが重要です。
症状が治まり、今までストレスを感じていた状況に対して自信が出るまで薬をしっかりと続ける事が大切です。症状は直線的に良くならず、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いので、それに振り回されて一喜一憂しないことも重要です。
天気痛について
気象の変化で持病が悪化するものを気象病ということもありますが、特に痛みに関するものを天気痛といいます。最近はNHKでもこの天気痛が取り上げられ、世の中で非常にこの症状で困っている人が多いと思われます。
低気圧がくる前や曇りの日に多く、特に当院通院中の方で多いのは頭痛・めまい・吐き気・だるさなどの症状が多い印象です。特にメンタルで調子を崩す方の多くにこの天気痛は合併しており、梅雨の時期などは五苓散などの漢方の処方が非常に増加します。
詳しい原因はわかっておりませんが、耳の中の内耳という気圧を感じるセンサーの問題といわれております。内耳が気圧の大きな変動を完治すると自律神経が乱れ様々な症状を引き起こすといわれております。
対処方法として以下のものがあります。
① 天気痛アプリを使用して、低気圧に備えて準備する。
② 薬を使用する
漢方薬:五苓散、苓桂朮甘湯
抗めまい薬:トラベルミン
痛み止め:ロキソニン、カロナールなど。市販薬でも可能ですが乱用はしないこと。
③ 食事と運動
バランスのとれた食事、規則正しい運動習慣は重要ですが、漢方で水毒に作用する漢方が効果的であるため、特に水分摂取→発汗の繰り返しは重要と思われます。具体的にはサウナ、岩盤浴など定期的に通うことなど有効かもしれません。ビタミン・ミネラルのバランスのとれたサプリの服用も人によっては必要と思われます。