お知らせ

スマホ・タブレットが脳に与える悪影響

 スマートフォンは生活に欠かせないツールになっていますが、過度な使用は高校生の脳や心の発達に大きな影響を与えうることが調査研究で報告されております*1。

 まず、1日の使用時間が1時間以内であれば前頭前野の働きが保たれますが、3時間を超えると勉強や睡眠をしっかり確保していても成績上位に入ることは難しくなると報告されています。勉強中にスマホを触ると集中力が低下し、数時間勉強しても実際の学習効果は大きく落ち込むといわれおります。そのため、学習の際にはスマホをオフにして、目に入らない場所に置くことが推奨されます。

 スマホによる学習と紙の学習の違いも明らかです。紙の辞書で言葉を調べる時は前頭前野が活発に働き記憶に残りやすいのに対し、スマホ検索では前頭前野が十分に活動せず「Google効果」と呼ばれる記憶の弱まりが生じます。これは「外部記憶」に頼る結果、脳がきちんと使われず、調べた内容を翌日には覚えていないという現象です。

 また、スマホ使用時間が長い子どもほど言語能力や幅広い脳機能の発達が阻害される可能性も指摘されております。前頭前野の成長期である10代にスマホに依存すると、本来伸びるはずの認知機能が十分に発達せず、大人になっても未成熟な状態が残る可能性があります。さらに、SNSは孤独感を強める要因となり、運動不足や生活リズムの乱れとも結びつきます。

 一方で、スマホを目的を持って能動的に使う場合には大きな問題は生じにくく、むしろ有効に活用できる面もあります。重要なのは「受け身で長時間使わないこと」「20時以降は使用を控えること」「運動や読書・勉強などでスマホに代わる活動や居場所を確保すること」です。

 上記の話題・論点を補強するニュースも散見されます。

 スウェーデンは教育成果や学力水準がヨーロッパの中でも高い国とされていますが、近年の国際的な調査で若者の読解力・理解力の低下が指摘され、政府は危機感を抱いています。その原因の一つとして、学校現場におけるタブレットやパソコンなど「デジタル機器の過度な導入」が問題とされております。政府はデジタル依存を見直し、紙の教科書を再び教室に戻す方針を打ち出しております。

 また英ガーディアン紙において「ハイテク企業で働く親たちが、自分の子どもを“コンピューター教育に懐疑的な学校”に通わせている」という事例も紹介されております。シリコンバレーにあるウォルドルフ学校(Waldorf School of the Peninsula)では電子機器を排除し、想像力や実体験を重視した教育を行っています。「低テク・ノーテクの教育は、“創造的な思考力”を育てる」とし、テクノロジーに慣れた学生ほど逆に“問題解決力や発想の柔軟性に欠ける”と警鐘を鳴らしています。

 スマホ・タブレットは非常に便利な道具ですが、使い方次第で高校生の学習・発達・心身の健康に大きく影響します。脳を育てるには、スマホに頼りすぎず、適度な制限と生活習慣の工夫が必要です。

*1 仙台市教育委員会と東北大学加齢医学研究所による「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」より