お知らせ

私の中にいる『私』たち

今回は心理士 岩崎の記事となります。是非参考にして下さい。 

「もっと頑張らなきゃ」と思っているのに、どうしてもやる気が出ない。不安になんてなりたくないのに、つい「もしこんなことが起きたら…」と不安でたまらなくなる。日々生活を送っていると、このような「本当はこう思っているのに、なんだかできない」という葛藤を多く経験しますよね。

 そんなとき私たちは「自分はなんて意志が弱いんだ」「こんな情けない自分は大嫌いだ」と、自分を「ダメな人間」として責めてしまいがちです。その結果気分が落ち込み、更に気力が湧かなくなり嫌なことを考え始める…という悪循環に陥ります。

 でももし自分が「ダメな人間」としての一個体ではない、としたらどうでしょう?自分の中に複数の『私』がいるとしたら?今回はちょっと不思議な「パーツワーク」をご説明したいと思います。

2. 心の中は、まるでにぎやかな「シェアハウス」

 心理学の世界には「パーツワーク」という考え方があります。これは、私たちの心を一つの人格ではなく「いろんな役割を持ったパーツ(部分)の集まり」として捉える方法です。

 一例をご紹介します。私は普段、休みに何をするか予定を立てます。何時から読書をしようとか、何時からは運動に行こう、その後買い物に行って…と、時間単位で区切って1日のスケジュールをこなしていくんですね。

 そのスケジュール通りに動くこともあるのですが、予定の途中で「今は映画を観た方が楽しい気がする。私はそれ以外絶対にやらないぞ」と、後ろのスケジュールを一掃してその時にやりたいことをする時もあります。

 せっかく予定を立てたのだからその通りに動きたい『私』と、今ここでの楽しみだけを求める『私』。同じ『私』なのに性格が真逆だと思いませんか?そのほかにも、大抵のことはやればうまくいくと思っている楽観的な『私』、新しいことを始めるときに失敗したらどうしようと不安を感じる『私』もいます。

 こんなに違うのに、一個体の自分として認識するのはちょっと無理があるというか、どう自分を認識していいのか苦しくなってしまう気がします。

 そこで先ほどの「パーツ」という概念を当てはめてみましょう。心の中に、いろんな性格の同居人が住んでいる「シェアハウス」をイメージしてみてください。私の場合はこうなるでしょうか。

  • 「しっかり者の学級委員」(ちゃんとやろうと予定を立てる)
  • 「自由奔放な子ども」(好きなことしかしたくない)
  • 「楽観的な傍観者」(のんびりにこにこしている)

「リスクを見積もる現実主義者」(失敗の可能性にいち早く反応する)

 あなたの心の中はいかがでしょう。どんな『私』がシェアハウスに住んでいそうでしょうか。観察して書き出してみるのも面白いと思います。「頑張りたいけどやる気が出ない」と思っている方だと「頑張ろうとする『私』」と、「やる気を出せない『私』」がいそうですね。

 このように見ていくとやる気が出ないのは「自分がダメな人間だから」ではなく、心の中の「やる気を出せない『私』」が例えば不安で動けなくなっていたり、休息を求めていたりする可能性がありそうです。

3. 「困った『私』」は、実はあなたを守っている

 パーツワークの最も優しいところは、「どのパーツも、あなたを助けようとしてくれている」と考える点です。

 どういうことか、再度私の例を使ってご説明していきます。先ほど紹介したやりたい放題の「自由奔放な子ども」のパーツには私も頭を悩ませていて、「せっかくスケジュールを立てて有益な休日にできると思っていたのに、全部無駄になったじゃないか!」といらっとするときもあります。

  一見、足を引っ張る怠惰なパーツに見えますが、よくよく観察していると実は「スケジュールをこなすことに必死になって疲弊する自分を休ませ、気力を回復させようと気遣っている」のだと気づきました。

 あなたの中の自分を苦しめるパーツはいかがでしょうか。自分を責めて「もっともっと」と追い込んでくる厳しいパーツをお持ちの方も多いと感じます。これも「先に自分で自分を厳しく律しておけば、他人から攻撃されずに済むはずだ」という、不器用な守りだったりします。

 「悪いパーツ」は一人もいません。皆あなたという存在を守るために、自分たちの持ち場で必死に頑張っているだけなのです。

4. あなたは「シェアハウスのオーナー」

 心がザワザワしたときは、自分を責めるのを一度お休みして、心の中の会議室に座ってみましょう。心の中だと難しそうであれば、書き出した紙を見ながらでも良いと思います。

 「あ、今は『鬼コーチ』が焦って怒鳴ってるな」 「その怒鳴り声を聞いて『寂しがりやな子』が泣いているな」

 そうやって、少し離れたところから眺めてみるだけで、不思議と冷静になれます。 あなたはパーツそのものではなく、彼ら全員を見守る「シェアハウスのオーナー」なのです。

5.より良く過ごすために

 今日から、嫌な『私』が出てきたらこう声をかけてみてください。 「教えてくれてありがとう。あなたは何を心配してくれているの?」

 自分を「変える」のではなく、自分の中のメンバーたちの声を「聴いて」みましょう。それぞれがそれぞれの思惑を持っています。 どちらか一方を尊重するのではなく、どうしたら全体として良い結論が出せそうか、双方の『私』の意見を聞きながらじっくりと考えて行きましょう。

 そういった日々の小さな対話が積み重なると、自分自身をちょっとずつ理解できるようになります。理解できると、自分のことも「まあそんなに悪くはないのかな」と思えてきます。是非日常の中で試してみてくださいね。

当院では以上のような背景を考慮した診療を行っております。初診ご予約希望の方はまずは診療相談または予約サイトからお問い合わせください。