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診療一般に関すること

生活習慣と脳の問題

 2月5日の記事「心身の養生」の追加です。

 心療内科・精神科というと心や人生における悩みが症状の原因ではないかと考えがちですが、実はその多くに生活習慣の問題が関与しております。

 つまり心の問題というよりは脳・神経細胞の劣化が精神疾患の悪化に関与しているということです。

 わかりやすい例でいうとアルツハイマー型認知症の方などで人格が以前より比べものにならない位変わった時、本人の性格が悪くなったと考えるよりは脳の劣化が原因と考えますね。アルコールなども脳にダイレクトにダメージを与え、長期間のみ続けると脳とくに前頭葉が劣化し人格が変わったりします。また数日間全く食べないで頭が働かずうつ状態になったときも栄養が原因と考えます。このように脳自体の劣化や機能低下が人格、性格、精神症状に大きな影響を及ぼしているのです。精神科の最初の初診では器質性疾患の除外が一番重要といわれております。つまり内科的な病気、アルコールの影響、ホルモンの影響など脳に影響を与える身体的な問題の検討、除外診断をすることが診断の第一歩なのです。

 疲弊した脳で色んな悩みを抱えているとさらに脳が疲弊してうつ状態が悪化⇒思考が働かない⇒解決できないから焦る⇒さらに一生懸命に考えようとする⇒脳がさらに疲弊してうつ状態が悪化する・・・と悪循環のスパイラルに入ります。

 認知行動療法などで否定的な認知を変えていこうというものもありますが、考える本体である脳が上手く働いていないと治療効果も十分発揮しないことが多いです。

 最近当院に通院している方に生活リズム表をつけて頂くことが多いのですが、生活リズムが昼夜逆転でめちゃくちゃであり食事についてもコンビニ弁当やカップラーメン、お菓子ばかり食べる、深夜食が多いとかの方が多いです。あと噛む回数が少ないのも特徴です。運動習慣もなく日の光も浴びないなども加わり、ベースとして薬物療法などの効果が出にくくなっております。もちろん認知行動療法などの心理療法も効果は薄いと思われます。

 以下の患者さん自身でやって頂きたい心身の養生のポイントを改変してまとめました。

 前回のものに追加したものについて太字にしております。

 食事の油についてはいろいろな議論はありますが、リノール酸からでるヒドロキシノネナールという物質が脳を萎縮させる作用があるといわれており、どちらかというと避けた方がいいものです。

 日光浴については脳内のセロトニンを増加させる作用があります。SSRIなどの薬の効果を上げる可能性があります。腸活についても然りです。

 対人関係の問題で悩み孤立傾向になる方も多いですが、極端な孤独についてはオキシトシンというホルモンの分泌が低下するので避けた方が望ましいと思われます。

 また統合失調症の家族の対応でよくいわれることですが、HEE(high expressed emotion)といって、怒ったり泣いたりわめいたり激しく感情的に患者さん対応すると予後が不良になるといわれております。確かに感情的に激しい人が近くにいると落ち着かなくなりますね。

清潔な習慣

□ 睡眠部屋の掃除をすること(ハウスダストなどを除去)

□ 毎日お風呂に入ること

良質の睡眠

□ 入眠時間と起床時間を一定にすること(入眠薬を同じ時間に内服)

□ 昼寝・夕寝は厳禁(昼寝は15分以下なら可)

□ 入眠1時間前にはスマホを使用中止すること

□ 土日祝日でもリズムを変えないこと(多くても1時間程度の変化にとどめること、まとめ寝は厳禁)

バランスのよい食事・咀嚼

□ 絶対正しいという食事内容はないため、様々な食材を万遍なく食べること

□ 最低30回噛んで飲み込むこと(意外と難しい)

□ BMI>25 空腹になるまで食べない(時間で食べない)、空腹時間を長めにとり空腹に慣れること

□ BMI<18 空腹にならなくても時間で食べてBMI20以上目指す

□ 入眠2時間前から水以外は口に入れないこと

□ 炭水化物でもお菓子類(砂糖)は控え目にすること

□ 油についてω3(アマニ油、シソ油、魚油)は多めにして、ω6(サラダ油、マヨネーズなど)やマーガリンは控えめにすること

□ 腸活をすること(腸内細菌製剤・発酵食品・食物線維・オリゴ糖)

適度な運動

□ ウォーキング1日5000歩(スマホで計測)

□ 午前中に30分以上の日光浴

□ 適度なストレッチ:ヨガ(YoutubeのB-life)、ラジオ体操

嗜好品の制限

□ 禁煙

□ 節酒(多くても1日アルコール1単位以下×週4日以下)

□ カフェイン、エナジードリンクをとりすぎないこと

・人間関係

□ 極端な孤独や感情的な反応をする人は避ける



心身の養生について

 現在通院中の方で症状が慢性化して寛解に至らない方、薬の反応が悪い方、再発を繰り返す方などがおり悩ましいことが増えております。

 また怒りのコントロールができない、イライラする、相手が許せないなども精神の問題として扱われがちですが、単純に生活の乱れが関係することも多いと考えられます。

 適応障害の休職中などに生活リズム表(診療案内の「不適応・ストレス」の項目にあり)やグラフ化体重日記などを最近つけて頂くことが多いのですが、睡眠リズムの乱れ、食生活の偏り、運動不足などが心身の不調の原因ではないかと思われる例が多数認められます。

 以下に患者さん自身でやって頂きたい心身の養生について、チェック項目を列挙致します。自身の生活を振り返ってチェックしてみて下さい。

心身の養生について

清潔な習慣

□ 睡眠部屋の掃除をすること(ハウスダストなどを除去)

□ 毎日お風呂に入ること

良質な睡眠

□ 入眠時間と起床時間を一定にすること(入眠薬を同じ時間に内服)

□ 昼寝・夕寝は厳禁(昼寝は15分以下なら可)

□ 入眠1時間前にはスマホを使用中止すること

□ 土日祝日でもリズムを変えないこと(まとめ寝は禁止)

バランスのよい食事

□ 絶対正しいという食事内容はないため、様々な食材を万遍なく食べること

□ 最低30回噛んで飲み込むこと(意外と難しい)

□ BMI>25 空腹になるまで食べない(時間で食べない)、空腹時間を長めにとり空腹に慣れること

□ BMI<18 空腹にならなくても時間で食べること

□ 入眠2時間前から水以外は口に入れないこと

□ 炭水化物でもお菓子類(砂糖)は控え目にすること

□ 腸活をすること(腸内細菌製剤・発酵食品・食物繊維・オリゴ糖)

適度な運動

□ ウォーキング1日5000歩(スマホで計測)

□ 適度なストレッチ:ヨガ(YoutubeのB-life)、ラジオ体操

嗜好品の制限

□ 禁煙

□ 節酒(多くても1日アルコール1単位以下×週4日以下)

□ カフェイン、エナジードリンクをとりすぎないこと

当院での精神療法の特徴②~病名・治療法の共有と病識について


 開院して数か月になりますが、ひとつ興味深かったのが自身の病気を知らないまま通院を続けている方が多いことです。「よくわからないけど薬をもらっている」「何となく通院しているけど治らない」のような感じです。一般的な内科疾患の診療ではあまりみられない現象かと思います。全部とはいいませんが、内科疾患では高血圧、糖尿病、脂質異常症など病名をほとんどの患者様は知っており、病気の治療方法・経過なども大まかに把握していることが多いです。

 心療内科クリニックでは患者さんに診断名は伝えない、あるいは共有しないといったことが度々あります。他院に通院していた方に「前の病院ではどのように診断されていましたか?」ときいても「さあ~?」という方も多いです。実際伝えられたとしてもうまく共有できていない場合もあります。病名を伝えないことでのメリットも確かにありますが、当院では可能な限り伝えること・共有することとしております。診断がよくわからない場合は「分からない」とも話します。病名を共有するメリットとしては、病気としてターゲットが分かりやすく目にみえてくるため、対処しやすいことがあります。どんな治療もそうですが、こちらが一方的に薬を出したり指導したりしても病気特に精神疾患自体はよくならないことが多く、共同作業にした方がうまく行くことが多いです。患者さんの生活習慣が大事になる糖尿病などと同じですね。病名や治療方法を共有するとネット社会なので皆様ネットで検索して色々と調べてきます。ネット情報には様々なものがあり玉石混交となっておりますが、それはそれでいいかなとも思います。ある意見を絶対視することが一番好ましくなく、当院での治療方針を含めて様々な意見から自分で治療方針を取捨選択していくことが大切だと考えます。

 また心療内科でよく使用することばに「病識」というものがあります。要は自分がどんな病気にかかっていてどんな治療をしているかちゃんと理解している、認識していることです。心療内科ではそもそもこの病識を得ることが難しい傾向にあります。脳という病気の場所そのもので考えるので自分が病気であると理解するのは難しいからです。認知症の方が自分で認知症だとわからないといった例や、うつの人がうつ状態なのに「まだまだ自分は大丈夫」だと考える例などがあります。足が捻挫すると腫れたり痛かったりするので確かに病気だとわかりますね。しかし脳の場合は故障した脳そのもので考えるという究極の矛盾があるためにこのような問題が起こるのです。壊れたパソコンで壊れたパソコンの故障個所を探すみたいであり、根源的に矛盾があるのです。

 このように心療内科ではそもそも病識を得ることが難しい傾向にあるため、病名や診断名、疾病の経過、治療法の再検討などの共有が診療する上で一層重要になると考えられます。