心理面接・検査

心理面接・カウンセリング

当院では、必要に応じて心理士の先生による心理面接・カウンセリングをおすすめしております。病態形成に心理的要因が大きい場合などに有効と思われます。定期通院の中で面接の併用が望ましい場合などは主治医から提案させて頂きます。費用については主治医にご相談下さい。

心理面接・カウンセリングとは?

心理士紹介

沓名ちひろ

略歴

立教大学文学部心理学科卒
立教大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了
精神科・心療内科クリニックを中心に勤務してきました。

資格・トレーニング歴

臨床心理士
公認心理士
TFT(思考場療法)アルゴリズムレベル修了
HRV呼吸法コーチ・レベル1修了
ボディコネクトセラピー コアスキルトレーニング修了
PTSDのためのPE療法修了
南青山心理相談室ロールシャッハ研究会シニアコース所属
ホログラフィートーク(ベーシック・複雑性PTSD)修了

所属学会

日本心理臨床学会

興味がある領域や得意とするアプローチ

認知行動療法やユング派等様々な領域の精神療法を学んできましたが、現在は精神分析的精神療法のトレーニングを継続的に受けています。臨床の現場では、悩んだり困ったりされている方の背景は様々で、特定の精神療法のやり方を当てはめるのは実践的ではないとの実感があります。そのため、様々な精神療法のエッセンスを取り入れ、来談される方によりフィットするアプローチができたらと考えております。

自己紹介

学生時代から「アイデンティティ」のテーマに関心があります。「自分が自分らしくいられる」をキーワードに、皆様の困りごとに寄り添えたらと思っております。プライベートでは、旅行を趣味としています。以前少しだけ乗馬を習った事がありますが、初心者ながら味わった人馬一体の心地よい感覚が忘れられず、旅行先では、機会があれば乗馬体験を楽しんでいます。とは言うものの、外乗りで牧場を出た馬は文字通り道草を食う事が多く、人馬一体感を味わうどころか、草を食べすぎて私を降ろした後座り込んでしまった馬もいました(笑)。

恩田千愛

略歴

高知工科大学マネジメント学部マネジメント学科卒
創価大学文学研究科教育学専攻臨床心理学専修修了

資格・トレーニング歴

臨床心理士
ボディコネクトセラピー アドバンス(上級)トレーニング修了
TFT(思考場療法)診断レベル修了
ロールシャッハ・テスト 基礎講座・基礎解釈講座修了
ホログラフィートーク(ベーシック・複雑性PTSD)修了
EMDRベーシックトレーニング修了

西新宿臨床心理オフィスGSV所属

所属学会

日本心理臨床学会
日本学生相談学会

興味がある領域や得意とするアプローチ

トラウマ、PTSD、パニック症の方や愛着の問題を抱えている方の援助に力を入れております。得意とするアプローチは、ソマティックアプローチです。心は身体に影響を与え、身体は心に影響を与えるという考えはよく耳にすると思います。ソマティックアプローチは、その考えのもと心と身体を別物として考えるのではなく、心と身体の間のコミュニケーションの活性化(統合)に重点を置く心理療法です。

自己紹介

こころとからだ横浜クリニックと大学学生相談室に勤務しております。
休日や業務終わりには、趣味のサウナ、グルメ、旅行、物語や芸術に触れるなどしてリフレッシュしております。自由気ままな性格のため、比較的マイペースな人生を送っていますが、他者との繋がりやご縁も大切にしております。自分自身から出てくる意思は確かに重要ですが、最近は外からやってくるものを受け入れ、それに一生懸命向き合うことも同じくらい重要だなと感じています。
ご相談者様が抱えている問題から解放され、ご自身らしい生き方を見つけられるようにお手伝いさせていただけたらと思っております。

中村奈生

略歴

成蹊大学文学部国際文化学科卒
上越教育大学大学院学校教育専攻臨床心理学コース修了

卒後、精神科・心療内科を中心に勤務してきました。

資格・トレーニング歴

臨床心理士
公認心理師
厚生労働省高度医療人材育成プログラム東京大学医学部附属病院精神神経科TICPOC職域架橋型コーディネーター養成コース修了
ペアレントトレーニング実施者養成研修修了
ボディコネクトセラピー コアスキルトレーニング修了
USPT中級トレーニング終了
ホログラフィートーク(ベーシック・心理的逆転)終了

あざみ野心理オフィス事例検討会所属

所属学会

日本心理臨床学会

興味がある領域や得意とするアプローチ

認知・行動療法的アプローチを軸にしながら、考え方の土台となる価値観を分析するスキーマ療法、トラウマに特化したケアも取り入れカウンセリングをしております。一番大切にしていることは、患者さんとの対話の中で方針が決まり、カウンセリングがオーダーメイドでありながら効果のあるものとなることです。職場や家庭でのストレス、人生や自身についての悩み、強迫症、パニック症や社交不安症などの不安症、ゲーム・ネット依存などの行動嗜癖、睡眠障害を抱える方の援助に力を入れています。

自己紹介

田舎に生まれ育ち、子ども時代は野原や雪の中で活発に過ごしていました。大学時代に哲学や臨床心理学に触れて過ごすことが楽しく、臨床心理士を目指すようになりました。好きなことは料理とポッドキャストを聞くことと食べることで、苦手なことは空腹に耐えることと走ることです。心の悩みは、それを抱えることだけでなく、誰かに打ち明けることも時にしんどく、勇気がいることだと思います。今抱えておられるものが、みなさまお一人おひとりの思う形に少しでも近づくようお手伝いができたらと思っております。

鈴木菜穂

略歴

徳島大学総合科学部社会総合科学科卒
徳島大学大学院創成科学研究科臨床心理学専攻修士課程修了

資格・トレーニング歴

臨床心理士
公認心理師
SSTステップアップセミナー中級研修修了

所属学会

日本心理学会
日本認知・行動療法学会

興味がある領域や得意とするアプローチ

認知行動療法と呼ばれる心理療法を中心に学んできました。自身にとってストレスを感じる状況下において,その時に出てくる気持ちや考え,行動に焦点を当てるものです。これによって,自分が抱えている悩みを,新たな視点で捉え直すことにも繋がります。

自己紹介

心と体のつながりに興味を持っています。このような心身相関の観点からも,皆さまの生活が,ご自身の望む形に少しでも近づくようなお手伝いをさせていただきたいです。皆さまのお気持ちを大事にして,共に取り組んでいきたいと思っております。また,日々の生活の中で安らぎを見つけることも大事にしています。私自身は,ラジオや音楽を聴いてリフレッシュすることが好きです。

心理検査

心理士の先生による心理検査を適宜行っております。
うつ病に対するSDS、不安障害に対するSTAI、性格や気質の検査としてTEG−Ⅱ、バウムテスト、風景描画法、ロールシャッハ検査などを適宜行っております。
検査費用について基本的に保険診療で行っておりますが、一部検査においては予約料が別途かかります。

ロールシャッハテストとは?

ロールシャッハテスト

スイスの精神科医であるヘルマン・ロールシャッハが1921年に考案した心理テストです。ロールシャッハは、子どもの遊びからヒントを得て、インクの染みが精神疾患の診断に用いられないかと研究を重ねました。インクを落としてできた様々な模様の図版の中から10枚を選び出し、さらに印刷所のミスによる図版の陰影をも有用であると判断して取入れ、現在の図版ができあがりました。このように偶然にできた図版が、私たちの心理的世界を巧みに映し出す刺激要素となり、パーソナリティの特性を知ることができる検査となっています。

現在、この図版は世界中で規格が統一され、勝手に図版を作成して検査に使用することは禁止されています。ロールシャッハテストはこれまで様々な研究が行われ、その信頼性と妥当性が繰り返し議論されています。検査の結果には個人差があるので、パーソナリティ検査として普遍性に欠けると指摘される一方で、パーソナリティの特性を知るためのツールとして有効であると実証されているのも、また事実です。

この検査の実施時間は、1~2時間程です。図版を見て、その図版が何に見えるかを答えていきます。正解や不正解はないので、見えたように自由に答えて下さい。検査によって考察できることは、思考様式・感情状態・対人関係・行動パターン等多岐にわたります。検査を通して自分の特性を知り、自分が現在抱えている問題・困っていることにどう影響しているかを考えるのにお役立て下さい。

風景構成法とは?

風景構成法

風景構成法は、1969年に精神科医の中井久夫氏によって創案されました。投影法による心理検査、芸術療法の中の描画療法としても活用されています。

風景構成法では、イメージ・表象機能を介して,被験者の抱く心のなかの風景(心象風景)を三次元から二次元へ変換して1枚の紙の上に描いてもらうことで,その人の人格特性をみるというものです。この風景構成法は、河合隼雄氏によって日本に導入された箱庭療法に示唆を得て創案されました。当初は,統合失調症患者への非言語的接近法として用いられていたほか、箱庭療法の使用の可否を検討する予備テストとして使用されていました。現在では、病院臨床の領域はもちろん、教育相談、児童福祉心理臨床の領域、司法関係の領域など、バウムテストとともに広く普及しています。

解釈には、ユング心理学や箱庭の解釈仮説等の知見が用いられます。描画法は本来多義的であり、一義的に判断するものではないという特性を踏まえ、検査者とのやりとりを通して自己理解・自己受容に役立てていくと良いでしょう。

バウムテスト(樹木画)とは?

バウムテスト(樹木画)

バウムテストは、スイスのコッホ(Koch.K 1952)が精神診断の補助手段として考案しました。スイスでは、当時すでに樹木画を、それを描いた人のパーソナリティの表現とみなし、職業適性検査や臨床心理検査に用いていました。しかし、その解釈は経験的直観に頼る場合が多かったそうです。コッホは樹木画の豊富なデータから、樹木画の特徴のなかにいくつかの普遍的な意味を見つけ出しました。彼はそれに樹木のもつイメージの文化史的・神話学的研究成果などの考察を加え、バウムテストを体系づけました。

では、どうして樹木画が、性格テストとして活用されるのでしょうか。コッホは「木の法則は内なるものを外に押し出すことであり、人間の心がその法則に従うのである。(中略)われわれは、樹木画が人間存在の何を描き出すのかのおおよそを知ることができる。それは、深層とごく表層のみごとの混合である」と述べています。木は大地に根を張り、そこから養分を得て天に向けて成長し、やがて枯れて朽ちていくというように、人間の生涯と同じようなプロセスをたどります。そして、形態的にも左右がほぼ対象で、内から外へ向かおうとする動きをもつなど人間とよく似ています。こうしたことから、樹木画には、意識・無意識を含めた自己像の一部が、ひいてはパーソナリティの全体性が反映されやすいと考えたのです。とはいえ、コッホはあくまで樹木画を、「精神診断のための補助手段」と位置づけており、「われわれは限界を知っていなくてはならず、心のすべてが表現されていると判断してはならない」とも述べています。

認知行動療法

心理士による認知行動療法を行っております。当院通院中の方で薬物療法にて改善が不十分な方や減薬を試みたい方、うつ病の再発を予防したい方などはご相談下さい。

認知行動療法とは、今注目されている心理療法の一つで、厚生労働省などでも大規模に研究が進められており、うつ病の再燃予防や不安症・強迫性障害に効果を発揮するといわれております。

認知行動療法は「今・ここ」にある問題を扱います。「今・ここ」にある問題は決してコントロール不可能なものではなく、よくよく見てみると、物事の捉え方の問題であることが多くあります。それを認知行動療法では「認知・自動思考」と呼んで特に焦点を当てて取り上げていくのです。「認知・自動思考」に影響を与えるものとして「スキーマ(信念)」というものがあり、それに焦点を当てることもあります。

認知行動療法の基本モデル

具体的には下記のような表を治療者と一緒に埋めていって、気持ちを外在化しつつ治療を進めていきます。

認知再構成法アセスメントシート

認知行動療法の治療方法の一つとしてうつ病をあげてみますが、下記のようにうつ気分とうつ的な思考(認知)には相関があり、互いに悪循環のループを作っています。ここではうつ気分ではなく、変化させられるうつ的な思考(認知)の方に焦点を当てます。認知は外部の出来事を自分なりに解釈したものとなりますが、多くは自然とご自身ごとの考え方の癖があります。その考え方の癖が非常に偏ったものだったりすると、気分や行動にまで悪影響を与えてしまいます。その偏った考え方の癖を「認知の歪み」と一般的に言いますが、認知行動療法ではこの認知の歪みを明らかにし、妥当な考え方に修正していくというプロセスを行っております。

うつ病に対する認知行動療法のイメージ

他にも、人前でドキドキしてしまう、強迫的な行為がやめられない、頭の中に不安がたくさん表れてしまうなど、さまざまな困りごとを抱えている方がいらっしゃいますが、そんなとき、認知行動療法が患者様の助けになれるのではないかと思います。また、お困りごとに応じて、認知行動療法の「行動」の部分にもアプローチをしていきます。具体的にはリラクセーションを行い、日々のパフォーマンスを上げたり、不安やパニックを和らげる手法もございます。

また認知行動療法の進め方を簡単に説明します。
原則として30分間の面接を16-20回行いますが、状態によって回数を変更することも可 能ですので、主治医と相談してください。

① まずあなたのストレスに気付いて、問題を整理してみましょう 。 問題領域リストの例 ・心理・精神症状の問題 ・対人関係の問題 ・職業上・学業上の問題 ・健康の問題 ・経済的な問題 ・余暇・娯楽の問題 ・その他など。
② その問題がどのような状況で起き、その結果どのような感情を引きおこしているのか調べてみましょう。
③ あなたの考え方(自動思考)があなたの感情や行動にどのように影響しているのか調べましょう。
④ あなたの自動思考の特徴的なくせに気付きましょう。
⑤ 自動思考の内容と現実とのズレに注目して、自由な視点で現実にそった柔らかいものの見方に変える練習をします。
⑥ 考え方が変わってきたら問題を解決する方法や人間関係を改善する方法も練習してみましょう。
①~⑥のようなかたちで認知へのアプローチは行われていきます。新しい柔軟な考え方を実際に毎日の中で生かして、使っていくことで、あなたの気持ちが楽になり、ストレスに対する抵抗力も高まってきます。自分を信じて練習をしましょう。

*面接のあいだには場合により、実生活の中で行う宿題(ホームワーク)が出されます。これは治療と 治療をつなぎ、外来と日常生活を結ぶもので、面接で話し合った事を考えたり、行動してみたりする目的があります。 宿題といっても、学校で出されていた気が重いものは違いますから、安心してください。患者さん一人一人が、より早く回復する上で役に立つ課題で、具体的な内容は患者さんと治療者 がそのつど無理がないように話し合いながら決めていくものです。

行動療法(暴露反応妨害法)

認知行動療法のうち行動により着目したものの中に暴露反応妨害法というものがあります。
ここでは暴露反応妨害法を中心に行動療法アプローチについて概説いたします。

やめたくてもやめられないこと、やりたいのにできないことはありますか?

例えば精神疾患をお持ちの患者さんにおいては、以下の様なことが挙げられます。
・強迫症の患者さんが鍵の確認などの強迫行為をやめられない
・パニック症や広場恐怖症の患者さんが本当は出かけたいのに外出を避けてしまう
・社交不安症の患者さんが社会生活に支障が出るほどに人とのかかわりを回避してしまう
・仕事や家事などでうまいこと手を抜くことができない
・困っていても人に甘えられない、頼れない
この記事では、これらの行動の問題に対して行われる「行動療法アプローチ」についてご紹介します。

行動療法とは?

行動療法の特徴として、誤解を恐れずにわかりやすく言うと以下のことが言えると思います。
・原因や過去の出来事を過度に分析・特定しない
・その代わりに、今まさに困っている行動を治療のターゲッ トとする
・困っている行動をなくすorやりたい行動を増やすことが目的

精神疾患の原因は、家庭環境、遺伝、対人関係、文化、時代背景など挙げればきりがありません。なぜ自分がこうなってしまったのか・・・と自分の歴史を紐解くことは時に有用ですが、答えのない問い長く向き合うことになります。原因を考えるうちに悲観的になったり過去は変えられないと絶望してしまう方もいます(症状の改善には必要な痛みであることも確かです)。

そこで行動療法では、まずは今起きているそして目に見えている行動を取り除くまたは増やすことを目的とします。そして症状となる行動が変われば、気持ちや考えも自然と楽なほうに変わっていきます。

気分や考えを変えるのは難しいですが、行動を変えるのはそれよりも楽にできます。「楽しい気持ちになって」と言われても多くの人は困惑するでしょうが、「口角を上げてみて」と言われたら(やりたいかどうかは一旦置いておいて)それなりにできますよね。

その行動はどこからくる?

人間の行動には、それをする理由が必ずあります。そしてその理由には、「学習」が関係しています。例えば、ある行動をしたことによって良いことがあったらその行動は増えます。反対に、ある行動をしたことによって悪いことがあったらその行動は減ります。
これは心理学用語で「行動随伴性」と言います。(これを理解しなくても行動療法はできるので興味があればご覧ください。)

4種類の行動随伴性について

4種類の行動随伴性

簡単に言うと、これまでの経験(学習)によって、自分にとって望ましいことが起きる行動か、自分にとって望ましくないことが起きる行動かを判断して、私たちは行動を選択しているということです。
自分で判断し選択していることのはずなのに、人は行動の問題で悩まされます。それは、行動選択の際の判断基準が「推測」や「一時的な効果」に依拠し、その結果、「事実」や「長期的な効果」と乖離してしまうからです。そして、乖離した判断による行動が習慣化すると、次第に「本当は安全なこと危険と思ってしまう」「その行動をしないと危険なことが起こると思ってしまう」というような間違った学習を脳がしてしまいます。すると意志とは関係なく、行動を止められなかったりできなくなったりします。

しかし、ここで大切なことは、脳は再学習ができるということです。

この再学習を促すのが行動療法で行う暴露反応妨害法や行動実験です。その治療方法について、具体的な例を用いてご説明します。

行動療法(主に暴露反応妨害法と行動実験による)の方法について

行動療法でまず行うことは、問題となっている行動の分析です。認知行動モデルにしたがって、きっかけとなる刺激に直面した後、考え(認知)・感情・行動がどのようなパターンで変化するかをひとりひとり個別的に分析し理解します。そして行動が生起して繰り返されるメカニズムを明らかにしていきます。例えばある強迫症の患者さんの場合だと、以下の様なモデルとなります(架空の事例です)。

認知行動モデル

矢印が循環しているように、行動の問題が起きているときは、悪循環が起きています。問題となる行動は一時的には不安や嫌悪感を低減させますが、その不安の低下は一時的なものなので、また同じようなきかっけとなる刺激に直面すると、同様の考えや感情が生まれ、同様の行動をとってしまうという悪循環です。

脳の中では、これまでの安全行動をとってきた経験から、知らず知らずのうちに、「鍵の確認をしろという強迫観念に従えば、恐ろしいことは起こらない」「不安や嫌悪感をなんとかするには、強迫行為をすればいい」という間違った学習がされているのです。

この悪循環から抜け出すために、悪循環の発端を考えてみましょう。
それは、一見問題とされる行動が、患者さんにとっては安全行動となっていることではないでしょうか。安全行動をしなくても恐ろしいことは起きないし、起きたとしても対処できることを再学習することができれば、脳からの間違った命令に従う必要もないと思えるでしょう。

悪循環の発端

再学習のために暴露反応妨害法や行動実験を行いますが、いきなり実践するのはとてもハードルが高いです。

そこで準備段階として、「感情の法則」「注意のコントロール方法(注意トレーニングや呼吸法)」を身につけたり、「不快な身体感覚の上書きを目的とする介入(当院では内部感覚暴露やソマティックアプローチを用います)」、「認知への介入(科学的・統計的な視点から客観的事実の検討や認知再構成法)」を治療者と一緒に行います。

多くの患者さんがこの段階で、症状のメカニズムやその対処法についてある程度理解でき、対処できる感覚を少しずつ持てるようになります(薬物療法も同時に行うとより効果的です)。症状の渦に飲み込まれる感覚から抜けて、症状と向き合いなんとかしたいというモチベーションが高まるよう治療者もサポートをします。

準備段階を経て、暴露反応妨害法や行動実験の実践に入ります。大切なことは「不安もあるけれどできそうなこと」から始めることです。どんなことならできそうかを治療者と話し合って決めます。

暴露反応妨害法(エクスポージャー)の場合

強迫症の確認強迫行為の場合、以下のように不安階層表を作ります(以下は外出時に鍵が締まっているか儀式的に確認することが止められないという例です)。不安階層表とは、不安のレベルを点数化して、階段のように並べたものです。そして、並べた行動をできそうなことから実践していくことで、「確認強迫行為をしなくても想像するような恐ろしいことは起こらないこと」や「不安や嫌悪感は時間の経過とともに自然と小さくなっていくこと」を体験していきます。

不安階層表

※おためしエクスポージャー
準備段階を経ても、最初のうちはひとりで上記を実践することは大変なことです。そこでカウンセリング内で治療者と一緒に行える、おためしエクスポージャーを行うことが多いです。治療者と一緒に安全・安心な中で最初の一歩を踏み出し成功体験となると、その後も治療がスムーズに進みやすくなります。

行動実験の場合

暴露反応妨害法に加えて行動実験を行うことも効果的です。行動実験とは、患者さんが恐れていることの核(Core Fear)を明確化し、それに暴露していき再学習を促す方法です。
例えばパニック症の患者さんの場合、「パニックが起きたらどうしよう」という不安の根底に「人に迷惑をかけたくない」「異常な人だと思われたくない」という考えがあることがあります。そのような恐ろしい事態を回避するために、「外出をしない」「体調に異変を感じたらひとりになる」という安全行動をとり続けるようになります。

すると、人に迷惑をかけたり、人から変な人と思われても「まあ、それなりに生きていけるな」「意外と人は自分を見てなかった」という検証がされず、安全行動をしないと恐ろしいことが起きるという事実と乖離した間違った学習が強化されていきます。もし人に迷惑をかけたり、異常な人と思われたら「生きていけない」という思いに至ることもあります。

そこで行動実験では、あえて人に迷惑をかけてみる実験や異常な人と思われそうな実験をし、本当に恐ろしい事態が起きるのかを検証します。どんな行動で実験をするかは治療者と話し合って決めていきます。実験の仮説と実際の実験結果を検証することで出来事に対する捉え方に幅が広がり、問題となる行動をしなくても自然と楽に生きていける感覚が生まれることを目指します。

おわりに

患者さんの中には、暴露反応妨害法などの行動療法に「つらい」「こわい」というネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃいます。その方にとっては、最も恐れていることであり、なんとか避けて生きてきたことに曝される療法とも言えるので、そんな気持ちになるのも自然なことです。

だからこそ行動療法では、「準備段階で対処資源を獲得して」「できそうなことから少しずつ」「治療者と一緒に」行います。いきなり症状をゼロにするのではなく、それをしなくても or しても大丈夫という体験をひとつずつ積んでいくイメージです。もし途中で失敗したり、できなかったことがあったとしても、その理由を治療者と振り返られたら、より効果的な方法を考え選択するきっかけになり得ますのでご安心ください。

自律訓練法

心と身体の状態はつながっているため、心の問題への一つのアプローチとして、リラクゼーション法はとても有効です。他の心理療法と比べ、身体感覚として変化が現れますので、変化を実感しやすいのもメリットです。練習すればするほど、ゆっくりとした呼吸、血圧の低下、幸福感の増大といった効果が実感できます。また、リラクゼーション法は、さまざまな健康障害の管理に有効であることが研究されています。 リラクゼーション法の有名なものとして、自律訓練法がありますが、他にも筋弛緩法や呼吸法、バイオフィードバック(行動療法)などさまざまな方法があります。

あがり症や対人緊張が強い方だけでなく、不安や心配が浮かんで困っている方や発達障害の方にも適応があります。また、日常的なストレスが高い方も、ストレスのセルフコントロールを目指して実施される方もいます。
当院でも実施しておりますので、ご希望がありましたらお伝えください。

ここではその中のひとつ、自律訓練法についてお話いたします。
自律訓練法は、1932年から行われている歴史の古い治療法です。
方法は、まずゆったりとできる椅子に座ります(もしくは、ベッドに寝た状態でも構いません)。その際に身体を締め付けるベルトや時計などは緩めたり外したりおくとよいでしょう。
暗く、静かで落ち着ける場所で行うことが肝要です。

3大リラックス法

それでは、ここから自律訓練法の公式についてお話いたします。
まずは、「気持ちが落ち着いている」と心の中でゆっくり繰り返します。この言葉は、その後の各公式の合間にも思い浮かべると効果的です。

【第1公式】

①両腕・両足に重さを感じます。右腕・左腕のどちらかに意識を向け、「とても重たい」と思って繰り返してみます。始めのうちは感覚の変化を感じられないかもしれませんが、練習していくと必ず感覚が出てきます。逆の腕も同様に行います。

②今度は同様に、右足・左足についても一つ一つ暗示をかけていきます。
両腕両足が重く感じられたら、うまくいっていますし、何らかの感覚の変化を感じられたらOKです。

【第2公式】

今度は同じやり方で「腕がとても温かい」と心の中でゆっくり繰り返します。両腕両足すべてにひとつひとつ行います。温かい感覚は、重たくなる感覚より出てきやすいので、あまり変化が感じられなかった場合は、暗示をかけている腕や足への注意をしっかり向けて行きます。

【第3公式】

腕に意識を向け、「心臓が静かに打っている」と心の中で暗示させていきます。

【第4公式】

呼吸に意識を向け、「自然に楽に呼吸している」と心の中でゆっくり繰り返し、腹式呼吸を行います。

【第5公式】

おなか、胃のあたりに意識を向け、「おなかが温かい」と心の中でゆっくり繰り返します。

【第6公式】

額に意識を向け、「額が心地よく涼しい」と心の中でゆっくり暗示していきます。

【消去動作】

リラックスした状態でいきなり立ち上がったりするのは危険なため、消去動作を行います。まずゆっくり目を開けて、手をグーパーグーパーうごかします。足も動かしていきましょう。最後に大きく背伸びをして、リラクゼーションを終了します。

リラクゼーション

TFT(思考場療法)

TFTとは

TFTはThought Field Therapyの略で、日本語では「思考場療法」と言います。
認知療法のパイオニアの一人キャラハン博士によって1970年代終わりから研究され、体系化された新しい心理療法です。キャラハン博士は、東洋医学の経絡のツボをたたく ことで深刻だった恐怖症を治したところから、研究・発達させました。
TFTは、症状に焦点化しながらも、言葉に頼らない方法で、心理的ストレス、身体症状、どちらかわからない症状にも適用できます。また、エビデンスがある(研究で効果が証明されている)セラピーとしてアメリカの政府機関(NREPP)に登録されています。

TFTの特徴

  • トラウマ(心的外傷)、PTSD、恐怖症、不安、ストレス、怒り、悲しみ、罪悪感、強迫性症状、うつ、体の痛み、パニックなど、広範囲の心理的問題に対処できます。 その効果は90%以上と言われ、年齢に関係なく、ペットにも適用きます。
  • 方法が簡単で、効果が早いと(10~15分)、副作用なく安全です。
  • 医療、心理、東洋医学の臨床、福祉関連施設や企業、スポーツ選手など広い分野で活用されています。
  • 通常の心理療法と違い、セルフケアにも適用できるという大変便利なテクニックです。
  • 世界の紛争や災害における人道支援に使われています。

自己治癒力を活用する

TFTによって症状が消去されるのは、自己治癒力によるものです。特定の症状に必要な経穴(ツボ=施療ポイント)を正確な順序でタッピングすることによって、あなたの経絡(体のエネルギー)が活性化され、思考場にあるパーターベーション(すべてのネガティブな感情の引き金になるような、とげのようなもの)を取り除きます。
副作用の心配がないのも、私たちの中にもともと備わっている自己治癒力を引き出すからだと考えられます。また、その人の考え方や認知、記憶を変えずに、症状のみを取り除くために、自然なセラピーだと言われています。

TFT

日常で使えるTFT

TFTは自分で必要なときにいつでも行えます。器具は必要なく、ツボを指で軽くたたくだけです。不安、恐怖、依存、うつ、トラウマなどさまざまな症状に対応するための手順を定式化したものがアルゴリズムです。問題の症状を一つずつ、適切なアルゴリズムを使って対処します。正しい手順で行えば、だいたい7割以上の確率で問題が解決できます。

TFT

ボディコネクトセラピー(BCT)

ボディコネクトセラピーとは

ボディコネクトセラピーとは

ボディコネクトセラピーは従来から効果的であった心理療法のエッセンスに、全く新しい概念を加えて考え出した身体から働きかける心理療法(ソマティックサイコセラピー)です。トラウマは情報とエネルギーとして、脳だけでなく身体にも残されています。身体感覚(フェルトセンス)に注意を向けることで、脳と体をつなぎ、トラウマのエネルギーをペンデュレーション、タッピング、眼球運動、アファーメーション、タッチセラピーなどを用いて体から解放(discharge)していきます。その概念は一つ一つ科学の裏付けがなされています。 特徴は一つ一つのトラウマ記憶の処理にかかる時間が圧倒的に短いこと、活性化が出にくいこと、解離起こしにくいように工夫されていることなどです。(ボディコネクトセラピーHPより引用)

BCTは東京未来大学の藤本昌樹先生が開発し、made in japanの心理療法であることから日本人の性質にも適していると言われています。その方法は問題となっているものを思い浮かべた際に生じる身体感覚に注意を向けながら、眼球運動と並行してご自身で特定のツボをタッピングすることでトラウマのケアを進めていくという流れになります。また、素早く安全にトラウマのケアが進む特徴があるため、負担が少なく効果的にケアを行えます。以下では、BCTで使用する呼吸法とタッピングするツボについて紹介します。

BCT

ボディ・コネクト・ブレス (BC呼吸): ボディコネクトセラピーで使う呼吸法です。

- BC呼吸のやり方・ポイント -

  1. 楽な姿勢で椅子に座る(からだの力が抜けない場合は、一度からだに力を入れてから抜くと抜きやすくなります。)
  2. 膝の上に手のひらを上にして置く(この時、からだや胸が開くような感覚を少し感じてみましょう。)
    • (1)息を吸いながら、こぶしをギュッとつくり、息を一旦止める。
    • (2)こぶしをゆっくり開きながら、息をゆっくり吐き、手のひらでゆっくりパーをつくる。

ボディタッピング:指2、3本を使い、下記①から⑦の場所を好みのスピードで順番にタッピングします。なお、タッピングを避けたい場合は、嫌な箇所を省いたり、触れるだけや撫でるだけでも問題ありません。

ボディコネクトセラピーでは、タッピングが1カ所終わるごとに、ボディ・コネクト・ブレスを行います。
例)合谷が終わったら、ボディ・コネクト・ブレスを行ってから、足三里のタッピングを実施し、その後も同様の流れでタッピングを行っていきます。

合谷

人差し指と親指の骨が交差するくぼみの部分で、人差し指側の骨の内側あたりです。合谷は、片手ずつタッピングします。

例) 右手の合谷をタッピング
→ボディ・コネクト・ブレス:2回
→左手の合谷をタッピング

合谷

足三里

すねの外側の、膝から指4本分下の部分にあるツボです。
両足同時にタッピングします。

足三里

眉間(印堂ともいいます)

眉の間です。眉間はタッピングするか、指で揉んでください。

鼻の下

唇の下(あご)

眉間

胸腺

胸部の中央前側にあります。

胸腺

神門

手首内側で、小指側のくぼみにあるツボです。片手ずつタッピングします。

例) 右手の神門をタッピング
→ボディ・コネクト・ブレス:2回
→左手の神門をタッピング

神門

⑧、⑨は、10〜15回ずつタッピングします。
⑧→⑨、⑨→⑩は連続して行います。(間に呼吸法は実施しない。)

内関

手と手首の境目からヒジに向かって、指3本分のところにあるツボです。
左右それぞれタッピングします

内関

曲池

ヒジを曲げたときにできるシワの先端にあるツボです。
左右それぞれタッピングします。

曲池

胸部

左右それぞれ10〜15回ずつ、手の平で軽く叩きます。

BC呼吸やタッピング

BC呼吸やタッピングはご自宅でも実施可能であり、セルフケアとしても役立てることができます。これまで様々なトラウマ治療を受けてきたけど効果がイマイチ…と感じている患者様に、是非最先端のトラウマ治療を体験していただきたいと思っております。

USPT(タッピングによる潜在意識下人格の統合法)

はじめに

「解離」「解離性同一性症」と聞いて何が思い浮かぶでしょうか。映画やドラマなどで多重人格のキャラクターを観たことがあっても、実際に「解離」という症状を身近に感じる方は少ないかもしれません。

では、「わけもわからず感情に振り回されてあとになって後悔する」「自分の中にいくつかのモードがあって使い分けている気がする」「いつも脳内会議をしてしまう」「自分を鏡で見ても私という感覚がもてない」「自分の心はひとつだと思えない」というようなことに思い当たりはありませんか?これらのことが当たり前に起きていると、本来は使わなくてもいいエネルギーも使いながら生活することになります。「他の人はすんなりこなせるのに自分だけすごく疲れている」ということも起きやすくなります。

そうした問題に対して、「解離」という観点から理解し、解離症状に特化した心理療法でアプローチする方法があります。『USPT[Unification of Subconscious Personalities by Tapping Therapy(タッピングによる潜在意識下人格の統合法、以下USPT)]』という新しい治療法です。ぜひご参照ください。

USPT

解離している人の心にはどんなことが起きているか

1)解離とはなにか
解離とは、「同一性の破綻」のことを指しています。分かりやすく言うと「同一性」とは、「昨日の自分と今日の自分は同じ自分」「右半身と左半身は同じ自分」というような自分に対するごく当たり前の感覚のことを指します。しかし解離が起きているときというのはこの感覚が失われており、自分の中に別のパーツがいます。その別のパーツが「本来の自分」の前に出てきたり、「本来の自分」と対立したり「本来の自分」を無視するということを繰り返しているイメージです。そのため上記のように、本来は使わなくてもいいエネルギーが勝手に使われてしまい、身体症状、抑うつ気分、無気力、イライラに悩まされやすくなります。

2)なぜ別のパーツができる(解離する)のか
あまりにつらい体験をすると、私たちの脳の中の情報処理機能がストップしてしまいます。「なぜこんなことに巻き込まれたのか、なぜつらいのか、そしてこのつらさをどうしたらいいのか、」ということを冷静に客観的に考えることができなくなります。(※ここでのトラウマ体験とは、生死に関わるような大きな出来事だけではありません。親子関係や人間関係での傷つきや挫折体験なども含まれます。)

このような処理できない記憶というのは、ぐちゃぐちゃ・モヤモヤとしたものであり、そのままでずっと持っておくにはあまりに重く、つらいです。なので、つらい出来事にまつわるすべての記憶(身体感覚、思考、感情、行動など)を「カプセル」に閉じ込めるようにして、表向きの自分とは「別モノ」として分けておきます(冷凍保存とも言われます)。心のなかに「トラウマ部屋」を作るようなイメージです。

そうすることで、学校や仕事に行ったり、人とかかわったりするような表向きの自分はつらさに巻き込まれすぎずになんとか生き延びることができます。つらい記憶をカプセルにしまい込んで、表向きの自分とは「別モノ(別のパーツ)」としておくこと(解離)は、対処でもあり、生き残るための方法でもあるのです。

しかし、別のパーツがずっとそのままだったり増え続けるとどうなるでしょうか。

6歳の時のパーツ、14歳の時のパーツ、20歳の時のパーツと、別のパーツで心が一杯になると、正常運転できる心のスペースは小さくなっていきます。すると、些細なことでも心がざわついたりストレスを感じやすくなります。また、カプセルは似たような出来事に弱く、気づかないうちに開いてしまって過去のつらさが吹き出してくることもあります(フラッシュバック)。物事を決めるときに迷いやすかったり不安になりやすいということもあります。

つらさの中を生き延びる対処としての「解離」ですが、もうつらさの渦中にいないときは、「解離」という方法を手放して、ひとつのまとまりをもった心で生きていく方が楽に生きていくことができます。自分の中でいろんなパーツが対立したり、抑え込もうとするのはとてもエネルギーがいりますからね。

3)解離にはレベルがある
「甘いものを食べたい。でもダイエットもしたい。今日くらいはいいよね?でもさっきも1個食べたしな・・・」天使と悪魔のように、心のなかにいろんな自分がいるというのも、ある種の解離です。しかしこれは健常レベルの解離で、解離にはいくつかのレベルがあります。

解離にはレベルがある

解離のレベル分けをするのは、自分の中にいる別のパーツの[①精巧さ:どれだけキャラ立ちしているか]と[②自律度:どれだけ本来の表の自分に働きかけることができるか]によります。①②が低いと解離のレベルも低く、①②が高いと解離のレベルも高いです。
第1次構造的解離は、単回性の心的外傷後ストレス障害(以下PTSD)や解離症の単純型が該当します。第2次構造的解離は、DSM-5では他の特定される解離症サブタイプ1(OCDD-1)が該当し、第3次構造的解離は、解離性同一性症(DID)が該当します。

TFT

1次から3次までの解離は、USPTの治療の対象です。ただし、現在もトラウマになるような過酷な出来事にさらされていて、そのつらさから生き延びる手段として解離している場合は、現時点では解離の治療はできません。まずは危険から回避し安心と安全を確保するという現実的な対処によって生活環境を整えてから、解離の治療を行う必要があります。

様々な精神疾患と解離

抑うつや不安、生活や労働が困難になるほどの身体症状にも「解離(構造的解離)」の視点を持つことで症状の改善に役立つことがあります。

例えば、うつ病やパニック発作、身体症状症などでは、心的外傷(あまりにつらい出来事)による無気力感や否定感が残存して抑うつや落ち込みが長期に続き、結果として難治性うつ病と診断されることがあります。また、見かけ上はパニック発作であっても、「過去の恐ろしい体験を身体が強く記憶していて、狭くて逃げられない場所などがトリガーとなってその記憶が噴き出すという再体験症状」として捉えることもできます。このようにトラウマの記憶とは、からだの方が記憶し続けることがあり、身体症状となって出現するということがよくあります。

発達障害についても特にASDについては、特有のファンタジーへの没頭傾向からの解離特性や、感覚過敏や熱中傾向によってストレスを感じやすく傷つきを体験しやすいことがあります。通常なら同心円状に広がる自己イメージが、ASD特性によってタッチパネル式となりやすく、場面場面で自分が違うという感覚が当たり前になる方もいます。

また、複雑性PTSDが第2次解離と同様の防衛システムをもつとの考えもあります(van der Hart)。処理できなかった傷つき体験がパーツとして未だに閉じ込められている部分と日々の生活をこなす部分が対立したりお互いを無視するという状態が続くと、複雑性PTSDの症状が出現するというものです。複雑性PTSDに特有の症状には、「自己組織化の障害」というのものがあります。自己組織化の障害とは、①感情制御困難、②否定的自己概念、③対人関係障害のことですが、傷ついた当時の「悲しみ」や「怒り」が自分の中でまるで今起きているかのように噴き出し、本当は安全な場においても人に頼れなかったり自分を許せなかったりして、今現在の社会生活に支障をきたすことがあるという考え方です。

解離の治療『USPT』

USPTで目指すゴールは、バラバラになった心を元のひとつに戻すことです。解離によって生じた別のパーツは、ジグソーパズルのピースのひとつのようなものなので、治療によってあなたの心というひとつのパズルが完成しても、ピース(過去のつらい経験をした自分)が消えてなくなるわけではありません。つらい経験を経ても今まで生きてきた強さと誇りをもって、最初の解離が起きる前のまとまりのある本来の心で生きていくことができるように、パーツの融合と統合を行います。

USPT中は、患者さんには閉眼していただき、治療者の問いかけに対して頭に浮かぶものを話していただきます。また、治療者が患者さんの膝や肩にタッピング(トントンと触れる)を行うステップがあります。治療では、関連する出来事にまつわることを詳細に語る必要はありません。しかし、「感情」についてはご自分の中ででもいいのでしっかり思い出していただく必要があります。そのため、治療の副反応として一時的に過去のつらさが活性化することがあります。カウンセリング以外の生活場面において活性化が起きても対応できるよう、USPTを始める前にBCT(ボディ・コネクト・セラピー)やマインドフルネスなどでセルフケアの方法を身につけるとより効果的です。

解離という症状は、決して映画やドラマの中だけの話ではなく、レベルの違いはあれど私たちの心に起こりうる自分を守るための方法です。また、解離が起きている方にとって、「自分の心がひとつではない」という感覚はあまりに当たり前になっていることが多いです。なのでその結果として起こる社会生活での困難や対人関係での苦痛などは感じるけど、その原因はよくわからない、又は自分のせいだと自責して悪循環になるということがよくあります。解離症については、未だエビデンスが立証された治療法はなく、USPTも然りです。ですが、心がいくつかのパーツに分かれるという説明にピンときた方やその他の精神疾患で治療が難航している方など、一度USPTというアプローチを体験してみていただきたいです。

ホログラフィートーク

ホログラフィートーク

はじめに

大人からひどいことをされたこと、学校でひとりぼっちにされたり、いじめられたこと、自分は人よりできないんだと思ったこと、いらない存在なんだと思ったこと、そしてお父さんやお母さんが守ってくれなかったこと・・・・・・

こんな体験をした子どもは、まだそれを乗り越える力も発達途上で、その出来事に蓋をしながら生きるほかありません。そして身体は大人になった今でも、蓋をした傷はそのままの強さの痛みでいろんな形で現れます。トラウマといわれるものです。

トラウマ

カウンセリングで患者さんの傷つけられた当時の話を聞くと、もしその時その場で、加害者やそれを許そうとする社会を「あんた間違ってるよ」と糾弾してくれる人がいたら、、、そしてその時の患者さんに「あなたはまったく悪くない。あなたは大丈夫よ」と言ってくれる人がいたら、、、とよく思わされます。

しかし出来事が過ぎ去ったあとは、もうその時間には戻れません。もう過去に戻れないこと、そして今は2023年の夏で身体は大人になったことというのは患者さんの心を守る壁にもなりますが、「解決しないまま残っている大きな何か」はその後の人生にもズーンと横たわります。

トラウマによるPTSDや複雑性PTSDの症状に対する治療法には、現在起きている症状を軽減・解消することを目的としたものから、過去の傷ついた心を癒やすことで現在の症状を改善することを目的としたものなど様々あります。アプローチの仕方も、トップダウン・アプローチという理性脳に働きかけるものから、ボトムアップ・アプローチという情動脳に働きかけるものなどがあります。

絶対にこれをやれば効くという方法はなく、治療者が患者さんのその時の状態を適切にアセスメントしながら、その時に必要なことを行うことが治療の奏功に大切なことでしょう。今回の記事ではその選択肢の一つとして、『ホログラフィートーク』という心理療法を紹介します。もし興味を持たれたら、いつでもお気軽にご相談ください。

ホログラフィートークはなぜ効くか?

前述の「解決しないまま残っている大きな何か」についてですが、もし、心の支えになってくれそうな治療者と一緒に、そして加害者をとっ捕まえて問いただすパワーや後ろ盾を持って、安心と強さを携えて、あなたの過去にさかのぼることができるとしたらどうでしょうか。未解決な出来事が起きた過去に戻って、解決して「もう終わったこと」と人生の主導権を取り戻して今に戻ってこられたらどうでしょうか、、、。不思議というかそれは無理でしょという話ですね。たしかに実際に過去に戻ることができるわけではありません。

ですが、少し考えてみてほしいのは、トラウマによる心の問題は、あなたの心のなかで起こっているということです。当時のあなたが心のなかで叫んでいる状態です。なので案外大切なのは、現実がどう変わるかということよりもまず、心のなかでその出来事がどう完了されるかされないかということなのだと思います。

「愛着」という言葉は最近よく聞かれるかもしれませんが、愛着というのも、乳幼児期に養育者との間で培われた目に見えない心の絆のことを指します。これがあることで、「自分は守られる存在なんだ」「求めたら誰か応えてくれるんだ」というどっしりとした土台が心のなかでできあがります。今現在養育者とどういう関係や距離感にいるかという現実的なことはあまり関係なく、あくまで心のなかの意識的・無意識的なイメージや感覚としてインストールされるもので、それがあるとその後の人生でも安定した対人関係を築けたり穏やかに過ごせるということです。

愛着を参考に考えてみると、心のなかにいいイメージや感覚があること、つまり「傷つき体験は終わったことで自分は主導権を取り戻した」、「自分は守られた、守られていいんだ」という体験を心のなかでしたかしていないかでは、その後の心の状態は大きく違うものになりそうです。

その後の心の状態

ホログラフィートークの特徴

ホログラフィートークは臨床心理士の嶺輝子先生によって開発された技法で、嶺先生がプロセス志向心理学、フォーカシング、オステオパシー、催眠などを日本とアメリカで習得された中で、それぞれの技法の特長や限界、日本人に合うやり方を考慮して築かれた心理療法です。

ホログラフィートークの特徴としては、軽催眠状態という安定した状態の中で、現在の心理的・身体的症状や様々な感情を切り口にして抑圧されやすい過去のトラウマにアクセスできること、問題の起源を探り、情報の書き換えをして問題を解決すること、その過程で健全な信念や価値観、人々とのかかわりを体験し安心安全の感覚を構築すること、現在に戻ってからも今後のための注意点やリソース(回復に役立つ資源のこと)を獲得できることが挙げられます。

嶺先生は「問題となる症状や感情の中に、原因も解決方法もリソースもある」と考えています。今の症状やネガティブな感情は、本来は健全だった自分の一部が死んだことを示す墓標で、そこには何が起きたか起きなかったか、何が未来の可能性でリソースなのかという解決方法を示す道標があるということを前提にトラウマケアの臨床を行なっていらっしゃいます。死んだ自分の一部に会いに行って救済する、そうした過去の癒しが今の癒しにつながっていくというのがホログラフィートークのエッセンスではないかと思います。

ホログラフィートークのエッセンス

ホログラフィートークの一連の流れ(過去にさかのぼって解決して現在に戻ってくるところまで)にかかる時間はだいたい90分です。当院では現状では90分の枠を設けるのが難しいので、45分×2回〜3回で行います。中断して大丈夫?と思われるかもしれませんが、開けたものはしっかり閉じる中断の作業と、今に戻るためのグラウンディングをしっかり行います。また途中でやめたくなったり、続けることに不安になったりしたら教えてください。患者さんの同意や安心感がないまま進めることは逆効果ですので、どんなことでも伝えていただけたらと思います。

楽になってはいけないという呪い・・・『心理的逆転』とは何か?

トラウマケアをするにあたって、触れておきたい概念で『心理的逆転』というのがあります。心理的逆転とは、ロジャー・キャラハンが提唱した概念で、ホログラフィートークの創始者である嶺輝子先生は「楽になってはいけないという呪い」と説明しています。

本来私たちは生まれてきてから「幸せになりたい」「いい人生を送りたい」ということをモチベーションにして様々な選択をしながら生きていきますが、心理的逆転が起きている人は、自分にとって良い選択と悪い選択があったときに、なぜか自分が苦しむ方の選択肢を選んでしまいます。自分は幸せになってはいけないということが無意識のうちに刷り込まれているのです。暴力的で自分を傷つけるパートナーを選ぶ人や心身に限界が来ているのに働きすぎる人など、「どうしてそっちの選択をするの?」という方に舵を切っていく人に心当たりはないですか?あなた自身にも心当たりがあるかもしれません。

そして心理的逆転の一番の問題は、周囲からの心理的、社会的、生理的なケアが奏功しないことです。カウンセリングや診察をはじめすべての心のケアは、ケアを受ける人が今よりも楽に生きていけることを目的としています。しかしそうした目的と、無意識レベルにある「私は楽になってはいけないんだ」という思いは逆行します。なので治療が中断したり、良くなったはずなのにまた元に戻ったり、そもそもケアに繋がらなかったりということが起きます。(治療者の知識や経験不足という要因も大いにあります)

治療者の知識や経験不足

嶺先生によると、心理的逆転の原因として考えられるのは、「虐待、ネグレクト、愛着の形成不全、否定されながらの成長(何度も言われてきた否定文が自分に染み付く)、トラウマティックな体験、ネガティブな信念の刷り込み(自分はこういう立場、存在なんだ。だからそんな自分が幸せになるなんて思えない)、何かの理由により自分を罰しながら生きている、強い恥辱感」があります。また、心理的逆転がみられたケースとしては、「がんなどの重篤な病、望まない生活から抜け出せない(抜け出さない)、自傷・他害する(衝動がある)、虐待をしてしまう、自分を大切にできない、色々なところや場面で虐待を受ける、パートナーからの虐待がある、虐待者をパートナーにする、認められているにもかかわらず離職する、借金をする、浪費する、依存症、どこに行っても治らない・どんどん悪くなっていく難治ケース」がよくあるそうです。

ホログラフィートークと心理的逆転

ホログラフィートークでは、開始前に必ず心理的逆転のチェックをします。無意識レベルに刷り込まれている心理的逆転なので、チェックシートなど言葉を使う方法は用いません。心理的逆転のチェックにはキネシオロジーで使われる身体の傾きや筋反射をみる方法を用いられます。心理的逆転が起きていたら、まずはホログラフィートークの技法を用いて逆転の解消を行います。

心理的逆転を解消したあとは、ホログラフィートークはじめ様々な方法や安定的な治療者とのかかわりを通して、過去やトラウマに乗っ取られた生活を取り戻すことを目指していきます。

これまでと決定的に違うのは、あなたを潜在的に苦しめてきた「楽になってはいけないという呪い」はもう解けているということです。あなたの心は自然にあなたにとっていい方法をみつけてきて、心の奥底では選びたかったことを選ぶことができる。そんなことが当たり前にできたら、どんな人生が待っているんでしょうか。

過去やトラウマに乗っ取られた生活を取り戻すことを目指していきます

ホログラフィートークの適応について

基本的には中学生頃から実施可能です。(言語発達がスムーズであれば小学校高学年頃からでも実施できます。)未成年の場合は、親御さんへのカウンセリングを並行または優先して行うとよりよいです。親御さんがご自身の過去の傷を心に抱えたままでお子さんとかかわることはとてもハードで家族全体が疲弊します。なのでまずは、お母さん、お父さんが楽になることがとても大切です。とはいえ、親御さんは日々お忙しいでしょうから、カウンセリングを受けやすい方法をこちらも検討いたします。オンラインカウンセリングもありますので、まずはお気軽にご相談ください。

そして、妊娠されている方、コミュニケーションが取れないくらいに症状が重篤な方は実施することができません。その時期にあったケアの方法があるのでご相談ください。

さいごに

今どうにも苦しんでいること、なんともできないと圧倒されることは、あなたが生きてきた過去にその起源や原因があることが多くあります。特にまだ小さくて守られないと生きていけなかった子ども時代に安心して過ごせなかったこと、自分は大切なんだと思えない何かがあったことは、心の生傷として残り、何らかの形で今にサインを出してきます。

ですが大人になったあとでも、もう大丈夫と思えることに身をおいたり、大丈夫と思わせてくれる人のそばにいたり、専門的なケアを受けることはできます。本当は当たり前に注がれるはずだった安心やあたたかさ、何をしてもしなくても自分は大切な存在なんだという感覚をあなたの心がしっかり受け取れるようにサポートできたらと思います。

PE療法

PE療法とは

PE療法とは

PTSDは生命の危険に匹敵するような危険、被害に直面した後、その体験の情動記憶が本人の意思とは関係なくフラッシュバック様に想起され、当時と同じ恐怖が再体験されるとう現象を中核とし、それに伴って回避麻痺、過覚醒が生じ、これらが1か月以上持続する病態です。

PE療法(=Plolonged Exposure Therapy ,持続エクスポージャー療法)は、ペンシルバニア大学のエドナ・フォア教授によって開発され、遷延するPTSDの症状の原因が回避であるとの仮定のもと、回避と逆の直面化を系統的に行うことによって、体験記憶の馴化、処理(プロセシング)を促進するPTSDに対する認知行動療法の一つです。

PE療法のエビデンス

PE療法は、APA(米国心理学会)、NICE(英国医療技術評価機構)、ISTSS(国際トラウマティックストレス学会)等のPTSDに対するさまざまなガイドラインにおいて使用が強 く推奨されているエビデンスのある治療法です。日本においても有効性が確認されており、被害者支援センター等でも実施されています。

表1 被害者支援センターにおけるPE療法の効果検証

表1 被害者支援センターにおけるPE療法の効果検証

表2 PTSDに対するセルトラリン(SSRI)治療後のPE療法による強化治療の効果

表2 PTSDに対するセルトラリン(SSRI)治療後のPE療法による強化治療の効果

表3 PE療法のPilot Study

表3 PE療法のPilot Study

PE療法の実施方法

PE療法は、1回90分で週に1回、原則10回(8~15回)のセッション(約3か月)で実施されます。プログラムの内容は、治療原理の説明、トラウマ反応に対する心理教育、呼吸法、実生活内暴露、イメージ暴露、プロセシングです。実生活内暴露は、トラウマ体験以降、トラウマを想起させるために避けている物事について、主観的苦痛尺度(SUDs 主観的な苦痛や不安を0-100までの数値を表す)を使用して不安階層表を作成し、段階的に向き合っていく方法です。イメージ暴露はトラウマ記憶を詳細に繰り返し想起し、記憶に向き合っていく方法です。イメージ暴露後、振り返りを行い、トラウマ体験後の非機能的認知(自責感、自己不信、対人不信など)を見直していくために対話形式でプロセシングを実施します。宿題として、セッションの間にも実生活内暴露やイメージ暴露に取り組みます。

PE療法の各セッションの実施内容

実施内容
Session1 プログラムの概要説明、呼吸法、宿題
Session2 宿題の振り返り、トラウマ反応についての心理教育、実生活内暴露の説明
実生活内暴露のための不安階層表を作成、不安階層表から宿題とする練習課題の選択、宿題
Session3 宿題の振り返り、イメージ暴露の説明、イメージ暴露の実施、プロセシング(イメージ暴露の体験を処理、宿題
Session4-5 宿題の振り返り、イメージ暴露、プロセシング、宿題
Session6-9 宿題の振り返り、イメージ暴露(ホットスポット)、プロセシング宿題
Session10 宿題の振り返り、イメージ暴露、プロセシング、プログラムの振り返り、不安階層表による変化の確認、再燃予防、終結

山を越えられるように刺激強度を調整

実生活内暴露、イメージ暴露を通して、安全な状況下で記憶や状況などのトラウマを思い出させる刺激に直面し、プロセシングにより非機能的認知を再検証していくことにより、トラウマ的な出来事と、それに似ているが危険ではない出来事の区別ができるようになります。PTSDの方は、トラウマとなった出来事について、「被害が今、ここで起こっている」と感じてしまうことがよくあります。そこでトラウマ記憶へのイメージ暴露を繰り返すことを通じ、トラウマを思い出すことでどれほど取り乱しても、再び被害を受けるわけではないことが理解されるようになります。さらに被害の出来事について考えることは危険ではないことに気づき、過去と現実が区別できるようになります。繰り返しトラウマの記憶の扉をあけて物語ることで、出来事の記憶の中には様々な別の要素があることに気づき、必ずしも世界が危険、自分は無力であると信じる必要はないことが正確に判断できるようになります。

恐怖のために避けてきた記憶やその想起刺激に直面化することは厳しい作業になりますが、カウンセラーがコーチ役となり、話し合いながら徐々に進めていく協働作業になります。
上図のように、山を越えていくイメージを持つと良いでしょう。その際、山を越えられるように刺激強度をカウンセラーと話し合いながら調整していきます。

ただし、PE療法はPTSDの方誰にでも適用されるものではありません。6か月以内に自傷行為や深刻な自殺念慮が見られる場合、状態が安定していない精神病障害がみられる場合、トラウマ体験の記憶が明確に欠落している場合等は適用になりません。また、DVや虐待など、現在もまだ被害に遭うリスクが高い場合にも、安全の確保が優先されます。

EMDR

EMDR

EMDRとは?

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)とは、1989年にアメリカのフランセス・シャピロによって開発された心理療法の一種で、主にPTSD、トラウマケアに使用されます。トラウマケア以外にも不安・恐怖症やパニック症も治療対象になります。

EMDRとは?

治療の注意点は?

現在の状況や環境が危機的なものであり安全の確保がされていない場合、EMDRは先送りした方が良いと思われます。例えば、DVや虐待被害を受け続けているのであれば、治療より安全の確保が優先されます。その他、トラウマ体験直後もEMDRを控えた方が良いと思われます。

情報処理の問題について

情報処理の問題について

MDRでは、心の問題や症状の基盤となるのは、脳の情報処理の問題にあると考えます。
誰もがトラウマ的な出来事などの不快な出来事を体験すると不快な気分になると思います。しかし、私たちは記憶を処理する能力により、通常であれば時間の経過とともにその不快さが薄まっていったり、弱くなっていったり、遠くなっていったりと不快さと距離を取ることが可能です。このような情報処理により、過去を過去と捉えられたり、過去の記憶と現在を統合して適応できていれば心の問題や症状が生じることは無くなっていきます。

一方、トラウマ的な出来事が脳内で適切に情報処理されないと、その処理されていない情報が脳に保存され心身の健康に影響を及ぼすと考えられています。フラッシュバックや悪夢、過緊張などの症状が認められます。

そのため、EMDRでは適切な情報処理を促し、感情や認知に健康的な変容が起こるように取り組んでいきます。そして、患者様が過去のトラウマに対処できるようになり、より健康的な生活を送れるようになることを目指します。

EMDRの施行方法

EMDRは、8段階からなる特定のプロトコルに基づいて行われます。以下は、一般的なEMDRの手順です。

第1段階:生育歴・病歴の聴取

・患者様の生育歴や現在の症状に関する情報を収集します。
・治療の目標や重要となりそうなテーマを決定していきます。
・治療に関する必要な情報をお伝えします。

生育歴・病歴の聴取

第2段階:準備

・トラウマと向き合うことにより不安定になることもあるため、治療に入る前に事前に安心感・安定感を取り戻すための方法を学んでいただきます。

第3段階:アセスメント

・ターゲットとするトラウマや出来事にアクセスしはじめます。

第4段階:脱感作

・ターゲットとしたトラウマや出来事に焦点を当てながら、両側性刺激(通常は眼球運動)を行います。
・トラウマの感情の強さを減少させ、情報処理を促します。

第5段階:植え付け

・肯定的な信念や思考を同定・強化していきます。

植え付け

第6段階:ボディスキャン

・身体的な感覚を注意深くスキャンするよう促します。

第7段階:終了

・セッションを終了する前に感情や思考を整理していきます。
・セッションの終了後も安定感が維持されるようなアプローチを行います。

第8段階:再評価

・治療の進捗や効果を評価します。
・必要に応じて新しいトピックに取り組むことがあります。

最後に

最後に

EMDRの過程は脳の本来の力を引き出すための治療です。また、止めたいときにはいつでも止めることができるため、ご自身のペースで進めていくことが可能です。さらに、起こった出来事のすべてをこと細かく語る必要もなくストレスの少ないトラウマ治療とされています。