診療案内

適応障害・ストレス反応

適応障害とは「ストレスの大きな生活上の出来事に対して順応が生じる時期に生じる軽度の抑うつ状態、情緒の変化」のことで、当院の初診の方の中でも大きな割合を占めている疾患です。

症状の出現時期としてはストレス要因が発生してから1~2か月程度で生じることが多いのですが、数年にわたるストレス環境を背景に発症することもあります。 ストレス要因としては、職場・家庭で生じるものが多いです。職場で多いのは、就職・転職・異動に伴うもの、人間関係によるもの、過重労働によるものなどがあります。家庭では、引っ越しによるもの、家族関係・家族のメンバーの変化などがストレス要因としてあげられます。

治療方法は比較的シンプルです。ストレス要因の除去・低減⇒順応あるいはストレスへの耐性の確立です。熱いお湯につかることを想像して下さい。いきなり42度のお湯につかると「熱い!!」と感じ耐えられませんが、一度お湯から出て、湯温を39度に下げて入り徐々に温度を上げていけば42度でも耐えられるかもしれないです(ストレスへの順応)。また身体を鍛えて42度のお湯にも耐えられる身体にすることでもいいかもしれないです(ストレスへの耐性の確立)。具体的には、職場ストレスが原因の場合は休職・業務量低減・職務内容の見直し・異動などの職場環境調整が必要になります。ただ人によっては眠剤、精神安定剤の内服でストレス耐性がそこそこ高まり、環境調整が特に必要ない方もおられます。

病気の予後についてですが、環境調整や内服加療などで脳が十分休まると2〜3週間程度で精神症状は改善することがほとんどです。逆に改善しない場合は、うつ病に陥っている場合あるいは心理的要因が大きい場合(ただ単に職場に行きたくない、とにかく無理!といったもの)などが背景にあると考えられます。精神症状が十分改善したら、短時間勤務などのリハビリを通して仕事に順応していく、あるいは認知行動療法・運動や内服調整でストレス耐性を上げていくことが必要になります。薬の内服がなければ、復職後の通院は1か月程度で終了する場合がほとんどです。

ストレス

反応は様々な形で現れる

休職と復職について

また適応障害でも症状の重い方や職場環境の問題が大きい場合、休職が必要になる場合が多いです。ここでは休職から復職に至る過程について詳しく説明致します。

1. 診断書の作成

精神症状や職場環境から休職が必要となった場合、多くの会社では「診断書」の作成が求められます。当院では必要時即日診断書(税込3300円)を作成させて頂いております。ケースバイケースですが適応障害の場合は「1か月弱の自宅安静」の指示をすることが多いです。より病状の重いうつ病の場合は2~3ヵ月の休職の診断書を作成することもあります。

2. 休職中の通院・休養の仕方

休職中は1~2週間に1回の通院となります。給与については有給休暇が残っている場合は有給の消化で、有給に残がない場合は病気休暇という形になることが多いですが会社によって異なります。病気休暇では、傷病手当が支給される場合が多いです(就職してからの期間など制限あるので注意してください)。
傷病手当金の支給には下記のような診断書が必要になりますので、通院時に持参ください(作成費用は3割負担で300円程度です)。傷病手当で注意が必要なのは定期的な通院(月2回程度)が必須であること、最終通院日までの作成しかできないこと(未来の日付までの作成はできないこと)です。例えば6月4日が通院日でしたら、7月末まで休職の予定があっても6月4日までしか作成できません。通常は前月末(つまりこのケースでは5月31日)までの作成とすることが多いです。
また傷病手当の取得に関しては必ず医師の指示に従って療養生活を送って下さい。自己判断で薬を薬局にもらいにいかず療養されたケースが以前ございましたが、傷病手当の支給が取り消しになりました。
休職中は当院Webサイトの「うつ病」を参照ください。休養のポイントとして脳をしっかり休めることが非常に重要となります。

傷病手当金

3. 復職への準備

精神症状が一定程度回復したと判断された場合、復職へ向けての準備開始となります。精神症状の回復の目安としては、十分に睡眠がとれかつ規則的であること、午前中に家事や散歩などの活動できることの2点です。多くの方は復職に至りますが、症状回復したにもかかわらず退職に至る方も比較的多いです。職場環境の調整が困難な場合、人間関係が破綻している場合、業務量や質の調整が困難な場合、復職リハビリなどの制度がそもそも職場にない場合などのケースで散見されます。
この時点で職場に対して、復職までの流れを確認ください。配置転換や異動が可能かどうか、産業医面談の有無、社内の復職リハビリの有無などの確認が必要です。

4. 復職リハビリテーション

復職に際して、休職状態からいきなり通常の出勤状態に戻ることは難しいと思います。一定期間の心身のリハビリが必要になります。リハビリに関しては3つのパターンがあります。

①自分自身でリハビリを行う場合
自分自身で生活習慣を律して、リハビリを行う必要があります。午前中に図書館やカフェに行くなどして職場関係の勉強や模擬業務をやってもらいます。計画も自分自身で立てることになります。職場への通勤訓練も必須です。
下記の「スムーズな復職のために」のチェックリストをすべて満たすまでリハビリする必要があります。また下記の生活リズム表(記録表)をお渡しすることも可能です。

②会社でリハビリを行う場合
会社によっては、復職リハを会社で行っていただける場合もあります。多いケースとしては午前中または午後の短時間勤務から開始して1か月程度かけてフルタイムまで徐々に就労時間を延ばすケースです。産業面談が間に挟まれることが多く、リハビリ負荷の調整がなされます。

③リワーク施設を利用する場合
会社で復職リハの制度がなく、自分自身でのリハビリが困難な場合に外部のリワーク施設を利用して復職リハを行うことになります。リワーク施設としては医療系と福祉系の2つに分れておりますが、それぞれ利点・欠点あります。
福祉系リワーク:リワークとして個別対応してくれることが多いのです。1~数カ月など期間も自由で午前のみ午後のみ利用などフレキシビリティが高いです。ただし利用するにあたり区役所の許可が必要となり利用開始までが煩雑です。最近は区役所の方から利用の許可が下りないことがあります。
医療系リワーク:区役所からの許可は必要なく利用開始の煩雑さはないのですが、個別対応はしてもらえず、一定期間にグループでリワークを行うケースが多いです。期間も数カ月と固定期間であることが多く、個別対応という点では劣ります。また紹介状が必要になります。

5. 復職直前の準備

復職リハをへて、復職可能となった時点で、復職可能の診断書を作成致します。会社によって復職時は診断書が必要ない場合もありますので、人事課または上司に診断書の必要性の有無をお尋ね下さい。また多くの会社では復職前に会社の産業医との面談が必要になります。配置転換や異動を希望される場合には、本人、産業医、人事、上司などとの話し合いを経て、復職後の業務内容や配置転換などが決定されることが多いです。復職後の業務の調整に時間がかかる場合もありますが、そのような場合は休職期間延長の措置をとらせて頂いております。

6. 復職後

復職後については月1~2回の通院になり、問題なく出勤できていれば終診となります。
うつ病で薬物治療を行っている場合は、薬剤調整が必要になるため一定期間の通院が必要となります。

スムーズな復職のために

<復職に向けてのチェックリスト>

不安感や抑うつが回復し、意欲が少しずつでてくると、職場復帰を考え始めると思います。休職中の方の多くは、ほとんどの時間を自宅で過ごされるため、通勤していた時に比較して活動量が大きく低下しております。スムーズな復職のためには、休職中でも出勤を意識したリハビリが必要になります。
まずはゆっくりと休養し、生活リズムを十分に整えて下さい。別にお渡しする「生活リズム表」の作成も併せて行ってください。
具体的に取り組んでおきたい事項について下記のチェックリストに挙げていきます。これらの事項が無理なくできるか確認されてから、復職可能の診断をしたいと考えております。
また復帰リハビリテーションという制度のある会社も多いので、職場の上司・人事課・産業医の方と相談し可能であればその制度も是非ご利用下さい。

【就業を意識した生活リズムを整える】

□ 通勤時間に合わせた時間帯に起床・就寝ができますか?
□ 日中、昼寝をせずに起きていられますか?
□ ウォーキングなど適度な運動ができますか?(1日5000歩程度)
□ 身だしなみを整えて外出ができますか?
□ 日中、図書館などの公共の場で過ごすことができますか?
□ 通勤の練習は可能ですか?実際に会社に時間通り行けますか?
□ 業務に関連した内容の新聞記事、雑誌、書籍、Webサイトなど集中して読めますか?

【復職に当たっての心構え】

□ 職場復帰をしたい、仕事をしたいと自然に思えますか?
□ 休職に至った原因・背景について自分なりに分析はできていますか?自分なりの対処はできますか?
□ 再発予防について考えていますか?(物事のとらえ方を見直す、相談を早めにするなど)

生活記録帳

コーチングについて

今後の就労についてお悩みを抱えている方、どのような生き方をしたらいいか悩んでいる方について、コーチングを受けることもすすめられます。必要な方は参照ください。

コーチングオフィス