診療案内

漢方外来

漢方薬は、自然界にある植物や鉱物などの生薬を、原則として複数組み合わせて作られた薬です。何千年という長い年月をかけておこなわれた治療の経験によって、どの生薬を組み合わせるとどんな効果が得られるか、また有害な事象がないかなどが確かめられ、漢方処方として体系化されました。
漢方が得意とする症状・悩みとしては、

  • 虚弱体質
  • 腰痛や忘れっぽいなどの加齢現象
  • 胃もたれや食欲不振、便秘などの胃腸の病気
  • イライラ、不眠、うつなどの精神症状
  • 生理痛や不妊、更年期障害症状などの女性の悩み
  • アレルギー疾患
  • 慢性の病気、冷え症

といったものがあり、まさに心身にまたがる症状が多く、漢方診療はまさに当院のコンセプトに合致するものです。

特徴

  • 1自然科学的で伝統的医学である:先人の治療経験の集積
  • 2心とからだを一体としてみる:体全体の調和を図る“全人的医療”
  • 3自個人の体質・特徴を重視し、症状をみる:原因が特定できないものや、“未病”の状態でも治療できる
  • 4天然物がベースとなった生薬を混合したもの:1剤に複数の成分が含まれているため、複数の症状にも効果が期待できる

現在の数千年の歴史を経てすぐれた処方だけが生き残り、「からだにやさしい」「長期間服用しても安心」という大きな信頼を勝ち取ってきました。現在はその科学的研究も進み、「なぜ漢方は効くのか」が次第に明らかになりつつあります。

特に最近は病気の治療のみならず、西洋薬では改善が難しい症状の緩和や健康管理を目的としてひろく漢方が注目されています。たとえば、現代人のストレス。長時間の労働・通勤、エアコンを効かせすぎた人工的な環境、不規則な食事時間、運動不足、睡眠不足・・・。こんな状態に長くさらされるとカラダの仕組みを統合する自律神経のバランスが崩れ、様々な症状を引き起こす原因となります。こうした場合、戦場に向かう武士が精神安定剤として服用していたと伝えられる漢方薬が、ストレスで動悸やのぼせを感じやすいタイプの現代人にも良く効くことがあります。長い時間と場所を越えたストレス対抗策が、意外にも漢方の中に見いだせるわけです。

さらに最近では漢方薬に関する科学的なデータも集積され、患者様一人ひとりのニーズに合った処方をお出しできる可能性がいっそう広がりつつあります。ご興味をお持ちの方はぜひご来院の上、ご相談ください。

西洋薬との違い

漢方が西洋医学と違うところは?

西洋薬はたいてい一つの有効成分で作られていて、血圧を下げたり、細菌を殺したり、熱や痛みを取ったりするなど、一つの症状や病気に対して、強い効果があります。
また西洋薬のベースとなる西洋医学では、患者の訴えのほかに検査を重視していて、その検査結果から病気の可能性を探ったり、治療法を考えていったりします。検査結果や数値などにしっかり表れるような病気を得意としていると言えます。

一方、漢方薬は1剤に複数の有効成分が含まれているため、多様な症状に効くのが大きな特徴です。
また漢方薬のベースとなる漢方医学は、患者の病状(訴え)や体質を重視し、その結果から処方します。そのため、体質に由来する症状(月経痛や冷え症、虚弱体質など)、検査に表れない不調(更年期障害の症状)などの治療を得意としています。

症状だけでなく、1剤で複数の病気が改善されることがあるのも漢方薬の大きな特徴です。たとえば、牛車腎気丸は、腰痛や頻尿に有効ですが、飲んでいると疲れやむくみなど、複数の症状が改善されることがあります。

体質をみる

漢方では、独自の理論に基づいて体質を診るオリジナルの“ものさし”があります。それが「証(しょう)」です。漢方では一人ひとりの病態だけでなく、体質を重んじて漢方薬が処方されるのです。
そのため、ときにはニキビの治療なのにおなかを診たり、冷えの治療なのに生理(月経)の状態を聞いたりなど、治してもらいたい病気や症状とは関係のなさそうな部分も診察したり、内容を聞いたりします。それは、その人の体質を見極めた上で、その人に合う漢方薬を処方するために必要な診察の一つなのです。

「証」とは、分かりやすくいうと、「その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)をあらわすもの」です。本人が訴える症状や、体格などの要素から判別します。そして漢方ではその「証」に合った漢方薬が処方されます。

したがって、同じ症状でも、自分の「証」と他の人の「証」が違えば、当然、処方される漢方薬も違ってきます。自分が服用している漢方薬を同じ症状だからといって、他の人が飲んでも効果が期待できない可能性があるのは、こういった理由からなのです。

「証」の分け方のひとつに「虚・実(きょ・じつ)」があります。
体力や抵抗力が充実している人を「実証」、体力がなく、弱々しい感じの人を「虚証」と言います。

虚証と実証

また気血水、五臓、六病位などの考えも証とともに、漢方診療においては非常に重要な要素となります。

五臓気血水