セルフケア

セルフケア self-careとは?

当院には横浜市内から通院される患者様が多いのですが、近隣の市や町などの遠方から通院されている方も多く、また多忙などの理由で緊急の状態でもクリニックにかかれない方が多くいらっしゃいます。また来院する方が増えるのにつれて、1人1人に割ける診察時間が短くなってきております。

このような環境の中で治療効果を最大限上げるために、通院している患者様の力も借りることが必要と感じております。可能な範囲でいいのですが、患者さん自身で勉強してもらって自身の力で安定した状態を維持できる、もしくは治療ができるのが理想的です。

セルフケアself-careとは患者さん自身で「自分の脳やこころの状態をモニタリングして、調子を崩す前に自分なりに対処すること」です。身体疾患の予防医学に近い概念です。

セルフケアself-careイメージ

産業精神医学以外の心療内科や精神科ではあまりセルフケアは重視されておりませんが、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を扱う内科では食事・運動習慣などのセルフケアは治療の大きな柱になっております。血圧や体重を毎日測定したり、万歩計をつけたりして体調管理をしますよね。血圧が高ければ塩分を控えたり、体重が増加したら運動量を増やしたり食事量を減らしたりするのがセルフケアに相当します。

精神疾患の病気の中心は脳であり、血圧や体重のようにモニタリングしにくい、わかりにくいことがセルフケアの進まない大きな要因のひとつと思われます。実際の診療でも血液検査や画像検査のような客観的な指標がないため、主治医の主観的な感覚なりが大きな役割を果たしております。本当にこの診断や治療で正しいのか常に悩みながら診療しているのが現実です。初診時は診断を外すこともあり、通院する中で軌道修正して診断に至るケースも多いです。

以下の「セルフケアの背景にある考え方・思想について」のリンクボタンを押してみて下さい。セルフケアに必要な基本的な知識についてまとめてあります。当院通院中の方に読んで頂けると嬉しいです。

そして

①身体のメッセージに耳を傾ける。
②脳が疲れたと認識できるようになる。
③意識的に脳を休ませることができるようになる。
④自身の疾患について知る・理解する。
⑤内的に象やライオンがいたら暴れさせず飼いならす。
⑥対人関係に配慮し人との距離のとり方に注意する。
⑦薬の種類・作用を学び、効果を身体で覚える。
⑧脳に悪い思考パターンを知る、避ける。
⑨脳に悪い生活パターンを知る、避ける。
⑩自殺をしないこと。

以上の項目を可能な範囲でいいので実践して下さい。そしてセルフケアで対処困難な場合は次の再診予約前でも構いませんので早めに受診して下さい。悪化してからの受診を避けてくれると非常にうれしいです。お互いの労力がだいぶ減りますので。

また夜眠ることはすべての精神疾患の治療の根幹になります。とにかくアルコール以外であれば内服薬を使ってでも夜しっかり眠ることが重要です。

そしてセルフケアも重要なのですが、最も大切なのは内的な自己(本当の自分)に気付きその声にいかに耳を澄ませられるかだと思います。自分がああしたいこうしたいと言ってもそれが親の期待であったり、他者の評価であったりすることが多く、「自分の意見≠内的自己の意見」であることが多いです。この違いを気付くために精神症状がでてくることも多いです。精神疾患の予防の根幹は内的自己の獲得であり、症状を落ち着かせる最も重要なkey pointであるとも考えております。

セルフケアの背景にある考え方・思想について