お知らせ

うつとうつ病 その(4)

2020年5月7日

本日はうつの治療についてまとめます。

Ⅵ.うつ病の治療はどうしたらいいか?

ⅣとⅤをもう一度読んで頂くと自然に答えは導かれると思いますがまとめますね。

先日お示しした「脳の疲労と回復」の図をみて頂いて、考えて欲しいのですが、うつ病の治療で最も大事なのは仕事や人間関係におけるストレス要因を減らすことです。それと回復するための休養が重要です。そんなこと当たり前といえば当たり前ですが、これが意外と難しいのですね。

ストレス要因として、過重労働、苦手な内容の仕事、苦手な人間関係などありますが生きていく上ではなかなか避けられないですよね。仕事辞めたいと思っても経済的な事情で辞められないといった方が大多数だと思いますし、家族の中で折り合いの悪い人がいてもなかなか別居して距離をとることも難しいですね。

また休養が大事といいましても、うつ病になりやすい人は元々、自分のことを悪い人間である駄目な人間と考えたり、不安・緊張が強い方であったり、頑張る性格であったり、分からないことをぐちゃぐちゃ考えたり、眠れなかったりと脳に負荷をかけることが得意で休むことは苦手な人たちなのです。

さらに食生活が乱れていたり、糖尿病などの病気持ちであったり、年をとっていたりでベースとなる脳自体の回復力、耐久力も失っている場合もあり、大変です・・(汗。

骨折とかであれば足を固定してしっかり休んで云々すれば通常は治ると思います。また歩かなければ足へのストレス要因はないと考えられることや、患者さんの側も治ると信じていることもいいですね。うつ病の場合は、休んで!といっても頭で色々と考えてしまったら休んでいない状態になるので治療がすすまないのです。また不眠も合併するため症状自体が休養の邪魔になるのです。

こんな感じで途方に暮れそうになりますが、逆にだからこそ粘り強く治療することにやりがいを感じたりもしています。以下に治療のポイントをまとめますね。こんなこと考えて普段診療していますので参考にして下さい。

治療のポイント

①正確な診断:うつ病であると正確に診断することが大事です。これが結構難しいです。というのもうつの症状は多彩であり、特に高齢者や若年者では抑うつがはっきりしない場合もあるからです。イライラや身体の症状が主体のものがありますので注意が必要です。うつ状態の段階なのかうつ病までいっているのかが抗うつ剤使用開始の鍵になることもあるので、その鑑別は重要です。

②不眠の解消:うつ病のほとんどに不眠が合併しますが、眠剤を処方しても頑固な不眠が継続する場合も多々認められます。ただ闇雲に眠剤を処方しても副作用もあったりするのでそれだけに頼るのは難しく、睡眠時無呼吸などの病気で不眠の場合もあります。また夜勤がある方や思春期のフクロウ症候群のように睡眠相が安定しない方、スマホ依存でブルーライトの影響で不眠の方などもおられます。うつ病治療の一丁目一番地が不眠の解消なのですが、ここでつまずくことも多いですね。

③背景にある精神疾患の把握と治療:様々な疾患でうつ病を合併することが多いのでそれらの疾患の拾い上げが大事ですね。特にパニック症、社交不安症などの不安障害ではそもそも常に脳が疲れている状態になりやすくちょっとしたことでうつ状態またはうつ病になりやすいですね。また最近増えている発達障害の方も不得意なことが生きていて多いため、脳が本当に疲れやすいです。またトラウマによるPTSDなども然りで常に緊張状態にあるためうつ病になりやすいです。その他、統合失調症、認知症なども元々の脳の耐久力の低下からうつ病になりやすいです。

④背景にある内科疾患の把握と治療:甲状腺疾患、糖尿病、癌など様々な身体疾患にも注意を払うことが大事です。どれも脳に負担をかけます。特に腰痛などの痛みがあるとそれだけで容易に脳が疲れます。痛みのコントロールもうつの治療には大事になります。うつの症状として結果的に痛みがでることもあり、原因と結果で混乱することも多々あります。

⑤性格要因の把握:頑張る、考えすぎる、完璧主義などの性格がうつの治療の妨げになります。そもそも頑張るなどは社会的にも評価される特質で、適応的に本人も身に着けた性格であることもありなかなか修正できないですね。認知行動療法などありますがそう簡単に考え方は変わりませんよね・・・。最近は変わることを促すよりは、今まで生きてきた自分なりの性格というか生き方を認めるというかが大事かなと思います。「今無事に生きているかな、いいんでは・・・」という感じです。自分を変えようというのはある意味ポジティブにも思えますが、ある意味では今の自分今までの自分の否定にもつながる考えだと思います。人間否定されると余計に意固地になったりしますよね。「絶対変わってやるものか!」とか笑。頑張って完璧主義であり結果としてうつを繰り返す自分といった現実を認めるというか「まあいいかな」「そんな自分でも何とか生きてきたんだよ」とすることでやっと変化の入口に立てるような気もします。私も何度も人を変えようとして失敗してきました。そもそも自分も昔からたいして変わっていないのでそんなこと人様に強要できないですよ・・・。

⑥環境調整:これは色々頑張ります。職場環境が原因であれば異動をすすめる診断書を書いたり、休職の診断書を書いたり致します。難しいのは中小企業などで休職、復職などの制度が整っていない会社ですね。休職=解雇みたいな所もあり、環境調整自体が不可能な場合もあります。また同居する家族関係の問題が原因の場合も大変です。別居できる経済力などあればいいのですがそうも言っていられない人がほとんどです。対人関係の距離のとり方、人間のとらえ方などアドバイスしますがなかなか難しい問題です。

⑦経済問題へのアプローチ:これも頑張ります。自立支援の診断書はもちろんですが必要な場合は障害手帳や年金の作成も致します。手帳を作成すると様々な経済的なメリットがあります。経済的な不安が軽減するだけで脳の負担は軽減されるので治療はうまくいきますね。以前スウェーデンかどこかの研究で抗うつ剤と10万円をうつ病患者さんに渡してどちらが効果的であったか比較する試験があったのですが、10万円の方が治療効果が高かったといったデータがあります。また障害者枠での就職なども就労支援事業所などを通じて積極的に紹介していきたいです。

⑧休養の仕方の共有:うつになった場合は、うつになりきることで脳は勝手に休まるので回復は早いですね。力を抜いて水に体を浮かべるイメージです。⑤でもいいましたがうつ病になる人は休むのが非常に不得手です。休職しても家で様々なこと(過去の後悔、将来不安等々)をずっと考え続けており脳を酷使している方が多いですね。すべき思考も多いですね。ああすべき、こうすべきと疲れる考え方がデフォルトになっている人もいます。とにかく頭を空にするというかぼ~とできることが治療においては非常に重要です。以前読んだ書籍にぼ~とするためのアドバイスがありましたので紹介しますね。一つは2歳~3歳の時に住んでいた場所の風景を眺める、二つ目は小学生の頃に夢中になった遊びをするとか。何かに夢中になるというのはある意味脳の動きが止まっている状態に近いのです。2~3歳の頃の風景というのは人間が一番リラックスできた時代の記憶を誘発するというか、同調するためにいいのでしょうね。

ここで私の意見を述べますが、掃除がいいと思います。掃除のメリットを述べるときりがありませんが、まず部屋が綺麗になるので気持ちいいです、それから掃除中は基本的に身体を動かすので頭の動きは止まっている場合が多いです。掃除をすると無駄なもの、いらないものが沢山みつかると思います。それを捨てるというか断捨離することでなぜか心もすっきりする場合が多いです。部屋のごちゃごちゃを空っぽにすることは、頭の中を空っぽにすることに同期するというか同調するのです。まず形から入るという意味で掃除は脳の休養の中では重要なポジションを占めると思います。

⑨断酒:アルコールとうつは深い関係があるのでここで詳しく述べますね。アルコールのメリットとしては脳がリラックスできることです。抗不安作用があるので普段不安や緊張が強い人はそれが緩和するし、すべき思考の人は頭がぼんやりするので脳の負荷が減ります。逆にデメリットは何でしょうか?アルコール自体が脳の神経細胞にダメージを与えるので脳の耐久力を下げる作用があるのです。また頭がぼんやりがいきすぎて思考抑制を中心としたうつと同様の症状がでることもあります。あとこれが一番問題なのですが、睡眠に対する悪影響です。よく酒で寝るといいうますが大きな間違い!!!です。アルコールには入眠作用がありますが、睡眠の質を悪化させ途中覚醒を誘発するのです。皆様も飲み会の日にすぐは寝れたけど3時頃にトイレに起きたら目がさえてしまって眠れないなどの経験があるかもしれないです。まとめるとアルコールのうつへの影響としてはデメリット>メリットになるのでうつの改善には断酒が望ましいです。少なくとも節酒が必要です。

⑩薬物治療、ECT、磁気療法:脳を休ませるための薬と脳内ホルモンのバランスを整える薬があります。両方の性質をもつものもあります。脳を休ませる薬の代表は睡眠薬を中心としたベンゾジアゼピン系の薬です。依存を起こしやすい薬で副作用もそれなりにあるので使用には注意が必要ですが、便利な薬です。頭がぼんやりしてよく休めます。不安もとれます。長く使っているとぼ~とした感じが続いてしまうので、どこかでは減薬が必要な種類の薬です。特にうつの回復期に飲んでいるとうつの症状なのか薬の副作用なのか紛らわしくなってきます。

また脳内ホルモンであるセロトニン・ノルアドレナリンなどのホルモンを整える代表はSSRI、SNRIがあります。また少し古い薬では三環系または四環系の抗うつ薬などがあります。使用するのはいいですが、中止にもっていくのが難しいものが多いですね。例えばパキシルなどは切れ味はいいですがなかなか中止するのは難しく使用開始も躊躇しがちになります。薬で注意が必要なのはうつがよくなってもしばらくは内服をやめないことです。減薬をゆっくりすることがポイントです。飛行機の着陸に似ていて慎重さが必要です。また不整脈や肥満などの副作用もあるため慎重な使用も大事です。

薬に反応しないうつについてはECTや磁気療法などの手段も最近はありますので必要な場合は適切な医療機関(病院)に紹介いたします。

以上、うつ及びうつ病の治療についてまとめましたが、今まとめた点を総合的に勘案しながら治療を行って参ります。

よくある精神科での間違いは抗うつ剤に頼りすぎることがあるかもしれないです。性格要因や内科疾患の合併や併存する精神疾患の有無の検討、環境要因、経済要因、食生活など検討が必要です。またアルコールについて重視していない場合もあるので注意が必要です。抗うつ剤も非常に重要ですが、それだけで病気に立ち向かうのはやはり難しいと思います。