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うつ病の診療の流れ 治療前半

2021年6月2日

今回は治療のお話ですが、治療のお話をする前にうつ状態についてもう少し分かりやすくするために、足の疲労と比較します。下の図を参照下さい。うつ状態でも重症度があり、足に例えた場合、軽いうつ状態は軽い捻挫に相当します。重いうつ状態は骨折に相当し中等度の場合はその間に相当します。

軽い脳の疲れ:足でいうと筋肉痛に相当。誰でもなる脳の疲れです。1日頑張って仕事すると頭が痛かったり、眩暈がしたりしますが翌日あるいは週末休むとまずまず回復するものです。心理的な問題でこのレベルでも動けなくなる方がおられます。高校生の不登校などで多いです。

軽いうつ状態:足に例えると捻挫レベルです。難しい仕事はできなくなります。簡単な仕事や人間関係などに恵まれて周囲の助けがあるとまずまず仕事をこなせます。薬を飲むと継続してある程度の仕事をすることも可能で、このレベルの方で当院に通院して薬だけもらって仕事を頑張っている方も沢山おられます。入社して数か月程度でおこる不適応の適応障害もこのレベルです。趣味はできるため週末はまずまず動けます。本人の性格要因にも左右されますが仕事がきつい場合や人間関係で問題を抱えている場合などはこのレベルでも仕事にいけなくなります。また中学高校の不登校についてもこのレベルで起こりえますが安易に不登校という道を選ぶと大人になっても同様の出社拒否などがあるため注意が必要です。このレベルは特に心理的な要因が症状の出方を大きく左右する傾向にあるため、性格要因や心理的背景の詳細な評価が必要となります。

中等度うつ状態:足に例えると重い捻挫~単純骨折のレベルです。簡単な仕事でも仕事をこなすのが難しくなります。ものすごい頑張り屋さんはこのレベルでも足を這ってでも出社するという方もおられ注意が必要です。基本的には休養・休職が必要なレベルです。病態によっては抗うつ剤も必要になります。基本的にこのレベル以上の方を「うつ病」と診断することが多いです。趣味も頭をつかうものは難しくなります。完治するのに数か月はかかるのが一般的です。

重いうつ状態:足に例えると複雑骨折レベルです。朝動けなくなります。もちろん仕事はできないため休養・休職は必須です。抗うつ剤は必要で、幻覚や被害妄想などの精神病症状がでることもあり、場合により抗精神薬なども必要です。希死念慮が強くなり入院が必要な場合もあります。完治するのに数か月~1年以上かかる場合もあります。

治療をする際に必要なのはこのうつ状態つまり脳の疲れの重症度の評価ですが、精神科ではどうしても画像診断・血液検査などの客観的な指標が欠けるため本当の病態というのがつかみにくいという性格があります。例えば足が捻挫や骨折したときに真っ赤に腫れていれば見た目にも分かりやすいのですが、脳が疲れている、捻挫しているといっても見た目ではわからないため客観的な視点が得にくいのです。分かりにくいことが世間で「ただのなまけ病」とも言われる要因でもあり、 患者さん自身が 自分でも何が起きているかわからず症状を悪化させてしまう要因にもなります。ではどうやってうつ状態の重症度を判定するのか?症状の強さはもちろん重要ですが、過去のうつ病の罹患歴や家族歴、休養による回復具合、薬の反応性、性格要因の分析、発達特性、知的レベル、仕事の量や質、家族関係、食事・飲酒などの生活習慣などで評価・判定していきます。初診時だけでは評価できないことも多いです。

重症度の評価・判定と同時に行うのが前回述べたうつ状態の背景要因の分析です。背景・原因によって治療方法は全く異なります。例えば甲状腺疾患が原因であれば甲状腺疾患の治療が優先されます。時間外労働が80時間など過重労働が原因ではその改善が優先されます。ここではそのすべてを書くことはできないので次回治療方法について大まかなものを紹介させて頂きます。