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発達障害 その(5)2次障害と合併症

2020年7月12日

Ⅶ. 2次障害・精神疾患の合併に対して

発達障害には、多くの精神障害が合併または併存します。発達障害の特性が背景にあることで精神症状が誘発される場合2次障害ということもあります。特にメンタルクリニックで対応が必要なものです。以下に対処方法もふくめてまとめます。

#1 知的障害・境界知能

例えば「会社で人とコミュニケーションをとることが苦手」「言いたいことがいえない」「計画を立てるのが苦手」「仕事上のミスが多い」などを主訴に来院し、発達障害の検査を希望される方が多数おられますが、元々のIQが標準より低いためにそのような症状を呈する場合があります。特に境界知能とはIQ70~85の方で、WAISという知能検査で診断されます。境界知能の方は一般就労されている方も沢山いるのですが、公的な助けや周囲の理解がないために本人がかなり努力をして何とかなっているケースが多いです。本人が頑張っている点は発達障害とも似ており、症状も発達障害とオーバーラップすることが多いので鑑別自体が難しいケースもあります。

#2 不安障害

人とコミュニケーションをとるのが苦手であり、2次的に対人恐怖などの不安障害を合併するケースがあります。逆に元々対人恐怖があることで2次的に人とのコミュニケーションが苦手になるケースもありその鑑別は大事です。また生きていくこと自体に困難を感じることで、様々なことに強い不安を感じてしまう全般性不安障害のような病態を呈する方もおられます。治療としては抗不安薬やSSRIのような抗うつ薬を使用することもありますが、実際の生きづらさなどへの対応や周囲の病気への理解など薬以外での対応も重要になります。

#3 うつ病

うつ病というよりはうつ状態になることが多いです。うつの詳細については当院のHPのうつ病の項目を参照下さい。発達特性が強い場合には社会生活上困難なことが多く、ぎりぎりの中で本人が頑張っている場合が多いです。結果として脳自体に負担がかかり脳が疲れてうつ状態になるのです。治療としては、よく眠ること、ボ~として脳を休めることが重要になります。もちろんうつ病まで悪化した場合は薬物療法も大事になりますが、根本的には環境調整などが重要です。①本人の能力とバランスのとれた業務内容や課題、②周囲が本人に無理な課題を押し付けないこと、③ゲームなどでの睡眠不足、昼夜逆転生活の解消、④本人も周囲の目を気にして無理に頑張らないことなどが大切です。

#4 双極性障害(躁うつ病)

発達障害の方で、気分にむらがある程度のものから明らかな躁と鬱を繰り返す躁うつ病まで合併することがあります。特にADHD多動衝動型でエネルギーが強い方に躁うつ病が多い印象です。エネルギーとは教科書にも書いていない私自身が作った造語ですが、エネルギー=動物的な生命力=波のイメージでいいと思います。日常生活において過剰なエネルギーがあることで、それが徹夜などの過剰な活動や思考をもたらすのですが結果的に疲弊してうつ状態になる。うつ状態で休んで回復したらエネルギーが充填されてまた過剰な活動・思考をして疲れる・・・といった具合です。気分安定薬など使用することもありますが、ADHDの薬であるインチュニブが有効なこともあります。過剰な活動が軽減すると共に気分の波が小さくなる印象です。心身ともに落ち着くといったイメージです。

#5 統合失調症

発達障害の方で幻聴が聴こえる方、独語が多い方、周囲への被害妄想が強い方など一見統合失調症の症状と区別がつきにくい方が結構沢山おられます。2次障害としての精神病症状なのか、統合失調症を発症したのかはっきりしない方も多いです。抗精神病薬を使用することもありますが、発達障害の方は薬剤過敏で副作用がでやすい方も多く量の調整に難渋することがあります。独語に関しては、症状の所で述べた没入体験が多いです。過去の映像がフラッシュバックして、その場面の中で誰かと会話していることもあります。

以上、合併症または2次障害についてまとめました。すべてに共通する治療・対応は、「とにかくよく眠ること」です。ASD特性のこだわりが強くスマホを夜遅くまでいじって寝ないことやゲームを夜遅くまでやることなどは症状改善の妨げになるので注意が必要です。また周囲は本人に人と関わることを求めがちですが、自閉をすることで精神症状が落ち着くことも多いので、一定期間の引きこもり、自閉も必要なことも多いです。